『枕草子』「鳥の空音」現代語訳・品詞分解【テスト対策の予想問題】参考文献の解説

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古典ノート

『枕草子』「鳥の空音」の現代語訳と品詞分解の解説です。古典探求の授業で取り扱われることの多いこの作品では「敬語」に関する学習もできます。授業の予習・復習や大学入試の基礎対策として、ぜひ参考にしてみてください。

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「鳥の空音」本文(ふりがな付き)

(とう)(べん)の、(しき)(まゐ)(たま)ひて、(もの)(がたり)などし(たま)ひしに、()いたう()けぬ。「明日(あす)(おほん)(もの)()みなるに()もるべければ、(うし)になりなば()しかりなむ。」とて(まゐ)(たま)ひぬ。

 つとめて、蔵人(くらうど)(どころ)(かう)()(がみ)ひき(かさ)ねて、「今日(けふ)は、(のこ)(おほ)かる心地(ここち)なむする。()(とほ)して、(むかし)(もの)(がたり)()こえ()かさむとせしを、(とり)(こゑ)(もよほ)されてなむ。」と、いみじう(こと)(おほ)()(たま)へる、いとめでたし。(おほん)(かへ)りに、「いと()(ぶか)(はべ)りける(とり)(こゑ)は、(まう)(しやう)(くん)のにや。」と()こえたれば、()(かへ)り、「『(まう)(しやう)(くん)(とり)は、(かん)(こく)(くわん)(ひら)きて、(さん)(ぜん)(かく)わづかに()れり。』とあれども、これは(あふ)(さか)(せき)なり。」とあれば、

 「()をこめて(とり)(そら)()にはかるともよに(あふ)(さか)(せき)(ゆる)さじ

(こころ)かしこき(せき)(もり)(はべ)り。」と()こゆ。また、()(かへ)り、

  (あふ)(さか)(ひと)()えやすき(せき)なれば(とり)()かぬにも()けて()つとか

とありし(ふみ)どもを、(はじ)めのは(そう)()(きみ)、いみじう(ぬか)をさへつきて、()(たま)ひてき。(のち)(のち)のは()(まへ)に。さて、(あふ)(さか)(うた)はへされて、(かへ)しもえせずなりにき。いとわろし。

 さて、「その(ふみ)は、殿(てん)(じやう)(びと)みな()てしは。」とのたまへば、「まことに(おぼ)しけりと、これにこそ()られぬれ。めでたきことなど、(ひと)()(つた)へぬはかひなきわざぞかし。また、()(ぐる)しきこと()るがわびしければ、(おほん)(ふみ)はいみじう(かく)して、(ひと)につゆ()(はべ)らず。()(こころ)ざしのほどをくらぶるに、(ひと)しくこそは。」と()へば、

「かくものを(おも)()りて()ふが、なほ(ひと)には()ずおぼゆる。『(おも)ひぐまなく、()しうしたり。』など、(れい)(をんな)のやうにや()はむとこそ(おも)ひつれ。」など()ひて、(わら)(たま)ふ。

「こはなどて。(よろこ)びをこそ()こえめ。」など()ふ。「まろが(ふみ)(かく)(たま)ひける、また、なほあはれにうれしきことなりかし。いかに(こころ)()くつらからまし。(いま)よりも、さを(たの)()こえむ。」などのたまひてのちに、(つね)(ふさ)(ちゆう)(じやう)おはして、「(とう)(べん)はいみじう()(たま)ふとは、()りたりや。(ひと)()(ふみ)に、ありしことなど(かた)(たま)ふ。(おも)(ひと)(ひと)()めらるるは、いみじううれしき。」など、まめまめしうのたまふもをかし。

「うれしきこと(ふた)つにて、かの()(たま)ふなるに、また、(おも)(ひと)のうちに(はべ)りけるをなむ。」と()へば、「それ、めづらしう、(いま)のことのやうにも(よろこ)(たま)ふかな。」などのたまふ。

 

「鳥の空音」現代語訳・全訳

頭の弁(行成様)が、職の御曹司に参上なさって、世間話などをなさっていた時に、夜もずいぶん更けてしまった。(行成様が)「明日は、(宮中の)御物忌みであるので、籠もらなければならないので、丑の刻になってしまったならば都合が悪いだろう。」とおっしゃって参内してしまわれた。

 翌朝、(行成様が)蔵人所の紙屋紙を(二枚)重ねて、「今日は、(まだまだ話し足りないような、)心残りが多い気がする。夜を徹して、昔話も語り明かし申し上げようとしたのに、鶏の声に催促されて(帰ってしまった)。」と、とても言葉多く書いていらっしゃる書きぶりが、たいそうすばらしかった。お返事に、(私が)「たいそう夜深いうちに鳴きましたという鳥の声は、孟嘗君のものであるでしょうか。」と申し上げたところ、折り返し、(行成様が)「『孟嘗君の鶏は、函谷関を開いて、三千人の食客がかろうじて逃げ去った。』と(『史記』に)あるけれども、これは(あなたと私との)逢坂の関である。」とあるので、

「夜通し鶏の嘘鳴きでだましても、断じて私は逢坂の関(二人が逢うこと)を許さないつもりです。賢明な関の番人がいます(から)。」と(私が)申し上げる。また、(行成様が)折り返し、

逢坂の関は、人が越えやすい関所ですから、鶏が鳴かない時にも(鳴かないうちから)関を開けて待つとか言いますよ(あなたもそうでしょう)。

と書いてあった手紙などを、最初の手紙は僧都の君が、何度も額までついて、取り上げてしまわれた。後々の手紙は、中宮様に。そして、(行成様の)『逢坂の』の歌には圧倒されて、(私は)返歌もすることができなくなってしまった。実に良くない(ことだ)。

 さて、(行成様が)「その(あなた)の手紙は、殿上人が皆見てしまったよ。」とおっしゃるので、(私が)「(行成様が私のことを)本当に大切に思ってくださっていたのだなと、このことによって自然とわかった。すばらしい歌などを、人が(人に)言い伝えないのは、つまらないことよ。一方で、見苦しい歌が世間に広まるのはつらいので、(「逢坂は」の)お手紙は、ひたすらに隠して、他人には、少しも見せておりません。(あなたの歌を隠した私の愛情の深さと、私の歌を広めてくださった)あなたの愛情の深さを比べると、同じようですね。」と言うと、

(行成様が)「このようにもののわけをわかって言うところが、(あなたは)やはり、普通の女性とは違うと思われる。『(あなたは)思慮に欠けていて、(私の手紙を)悪く取り扱ってしまった。』などと、普通の女性のように言うだろうかと思っていた。」などと言って、笑いなさる。

(私は)「これは(また)どうして(そうおっしゃるのですか)。(広めていただいた)お礼を申し上げよう(と思っていましたのに)。」などと言う。(行成様が)「私の手紙を(あなたが)隠しなさったことは、また、やはりしみじみとうれしいことであるよ。(もし私の手紙を人が見たとしたら)どんなに情けなくつらいだろうに。今後も、そのように(失敗をかばってくれる人だと)頼りにし申し上げよう。」などとおっしゃって後に、経房の中将がいらっしゃって、「頭の弁が(あなたを)たいそう褒めていらっしゃるというのは、知っているか。先日の(あなたの)手紙に、書いてあったことなどを(行成様が)語りなさる。(自分が)大切に思う人(あなた)が、他人に褒められるのは、たいそううれしいことだ。」などと、真剣におっしゃるのもおもしろい。

「うれしいことが、二つで(重なって)、あの方(行成様)が褒めてくださるということの上に、また、(あなたの)大切に思う人の中に(私が)入っておりましたことを(うれしく思う)。」と言うと、(経房様が)「それは、(まるで私があなたを大切に思っているのを)珍しく、今初めて知ったことのように喜びなさることよ。」などとおっしゃる。

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「鳥の空音」重要語句と意味

一日喜びなど(て)かひなし殿上人よに…(打消)わづかなり明かす聞こゆ語 句
名詞名詞副詞名詞形容詞名詞副詞形容動詞動詞動詞名詞品詞
      ナリサ四ヤ下二 活用
①いちにち。②終日。③先日。④ついたち。▼ここでは③の意。①お礼(をすること)。②国司などの任官。官位の昇進。③祝い事。▼ここでは①の意。どうして。①先例。故事。ならわし。習慣。②普通。普段。▼ここでは②の意。つまらない。取るに足りない。清涼殿の「殿上の間」に昇殿することを許された者。決して(…ない)。断じて(…ない)。①ほんの少しだ。②(連用形「わづかに」の形で)やっと。かろうじて。▼ここでは②の意。(動詞の連用形について)夜通し…する。①(「言ふ」の謙譲語)申し上げる。②(謙譲語補助動詞)…申し上げる。…してさしあげる。③聞こえる。④世間に知られる。評判となる。▼ここでは①の意。①十二支の第二。②北北東の方角。③時刻の名。現在の午前一時から三時頃。または午前二時頃。▼ここでは③の意。意 味

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「鳥の空音」品詞分解

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「鳥の空音」テスト予想問題

補充 「夜いたう更けぬ」の「ぬ」と異なる意味・用法のものを次から一つ選べ。知

ア 参り給ひぬ

イ いみじう言多く書き給へる

ウ 三千の客わづかに去れり

エ これにこそ知られぬれ

答 エ

補充 「明日、御物忌みなるに籠もるべければ、丑になりなば悪しかりなむ。」の中には同じ助動詞が二つ使われている。それぞれ一文節で抜き出し、その助動詞に傍線を引け。知

答 なりなば・悪しかりなむ

補充 「丑になりなば悪しかりなむ」と発言したのはなぜか、五十字以内で説明せよ。思

答 夜がたいそう更けてしまい、このままここに居続けては天皇の物忌み当日になってしまうにちがいないから。(49字)

補充 「丑になりなば悪しかりなむ」の傍線部と同じ意味・用法のものを次から一つ選べ。知

ア 小倉山峰のもみぢ葉心あらばいまひとたびの御幸待たなむ

イ 願はくは花のもとにて春しなむその如月の望月のころ

ウ かばかりにては飛び下るとも下りなむ

エ 橋を八つわたせるによりてなむ、八橋といひける。

答 ウ 

発問 誰が、どこへ「参り給ひぬ」なのか。思

答 行成(頭の弁)が宮中(天皇のもと)へ。

補充 「つとめて」の意味を答えよ。知

答 翌朝

発問 「残り多かる心地」とは、具体的にどのような気持ちか。思

答 まだまだ話していたいという気持ち。

発問 「催されてなむ」の後にはどのような言葉が省略されているか。思

答 帰りにける。(帰りぬる。帰る。出でにける。出でぬる。出づる。)

 

発問 「夜を通して…聞こえ明かさむ」「鶏の声に催されてなむ」からは、行成がどのようなことを匂わそうとしていることがわかるか。思

答 会って話をしたかったが、それができなかったということ。

発問 何を「いとめでたし」と言っているのか。思

答 行成(頭の弁)の筆跡。

脚問 この「逢坂の関」という地名には別の意味がこめられているが、それは何か。思

答 行成と作者とが「逢ふ」こと。

補充 「よに逢坂の関は許さじ」を現代語訳せよ。思

答 断じて私は逢坂の関を許さないつもりです。

発問 「心かしこき関守侍り」には、どのような意味が込められているか。思

答 あなた(行成)には断じて逢いませんという意味。

発問 「鳥鳴かぬにも開けて待つとか」には、どのような意味が込められているか。思

答 作者に対する「本当は私をいつも待っているのでしょう」という戯れの意味。

発問 「僧都の君」が作者に「いみじう額をさへつきて」行成の手紙をもらい受けたのはなぜか。思

答 一流の能書家である行成が書いた手紙には芸術的価値があるため、どうしても入手したかったから。

発問 「初めの」、「後々の」は、それぞれ具体的に何を指しているか。思

答 「初めの」=「今日は…催されてなむ」と書かれた行成からの手紙。/「後々の」=「孟嘗君の…逢坂の関なり」と書かれた行成の手紙と「逢坂は…開けて待つとか」と書かれた行成からの手紙。

発問 第二段落でやりとりされている手紙について、その順番を教科書に数字で記入し、誰から誰への手紙かを答えよ。思

答 ・手紙①「今日は、…催されてなむ。」、行成→作者。

・手紙②「いと夜深く…孟嘗君のにや。」、作者→行成。

・手紙③「『孟嘗君の…逢坂の関なり。」、行成→作者。

・手紙④「夜をこめて…関守侍り。」、作者→行成。

・手紙⑤「逢坂は…待つとか」、行成→作者。

補充 「いとわろし」とあるが、誰のどのような気持ちか、簡潔に説明せよ。思

答 作者の、行成の和歌の詠みぶりに圧倒されて、返歌ができなかったことをみっともないと思う気持ち。

発問 「逢坂の歌」、「その文」は、それぞれどの和歌を指しているのか。思

答 「逢坂は…」の和歌。/「夜をこめて…」の和歌。

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発問 「殿上人みな見てしは」を現代語訳せよ。思

答 殿上人が皆見てしまったよ。

脚問 「まことに思しけり」とは、誰が何をどう思ったということか。思

答 行成が作者のことを本当に大切に思っていたということ。

発問 「これ」はどのようなことを指すのか。思

答 行成が作者からの手紙を殿上人たちに見せたこと。

発問 「知られ」の「れ」を文法的に説明せよ。知

答 自発の助動詞「る」の連用形。

発問 「めでたきこと」「見苦しきこと」は、それぞれ何を指すか。思

答 作者自身が詠んだ「夜をこめて…」の歌。/行成が詠んだ「逢坂は…」の歌。

発問 なぜ「いみじう隠して、人につゆ見せ」なかったと言うのか。思

答 行成の見苦しい歌が世間に広まるのはつらいから。

補充 「人につゆ見せ侍らず」を現代語訳せよ。思

答 他人には、少しも見せておりません。

発問 「御心ざしのほど」とは、具体的に何を指しているのか。思

答 行成から作者への愛情の深さ。

補充 「なほ人には似ず」とあるが、「人に似」るとどうであろうと考えたのか。それが端的にわかる部分を文章中から抜き出せ。思

答 例の女のやうにや言はむ

脚問 どういうことが「思ひぐまなく、悪しうしたり」だというのか。本文中から抜き出せ。思

答 その文は、殿上人みな見てしは。

発問 誰がなぜ「笑ひ給ふ」のか。思

答 行成が、作者の返事が機転の利いたものであったことに感心したから。

補充 「まろが文を隠し給ひける」とあるが、①誰が、②誰の手紙を「隠し」たと言うのか。それぞれ次から選べ。思

ア 頭の弁

イ 関守

ウ 僧都の君

エ 作者

答 ① エ ② ア

 

発問 どのようなことになったら「心憂くつらからまし」なのか。思

答 自分(=行成)の手紙が人目に触れること。

脚問 何を「頼み」にするのか。思

答 今回のやりとりで作者が自身の見苦しい手紙を隠してくれたように、今後も自分に心を配ってくれること。

発問 「思ふ人」とは、誰か。思

答 清少納言。(作者。)

発問 「うれしきこと二つ」とは、何と何を指すか。思

答 行成が作者を褒めていたことと、経房が作者を「思ふ人」と述べたこと。

発問 「かの」の「か」は誰を指すか。思

答 藤原行成。(頭の弁。)

発問 「褒め給ふなるに」の「なる」と、「うちに侍りけるをなむ」の「ける」を、それぞれ文法的に説明せよ。知

答 伝聞の助動詞「なり」の連体形。/詠嘆(気づき)の助動詞「けり」の連体形。

発問 「今のこと」を現代語訳せよ。思

答 今初めて知ったこと。

発問 「それ、めづらしう、今のことのやうにも喜び給ふかな」という経房の言葉には、どのような気持ちが込められているか。思

答 あなたは私が前から思いを寄せていることを知っているはずなのに、今知ったように喜ぶなんておかしいなと、男女の関係を匂わせて非難するかのように言葉で戯れて楽しむ気持ち。

補充 「喜び」の理由として最も適当なものを、次から選べ。知

ア 中将に「大切に思う人」と言われたから。

イ 頭の弁に自慢の書をほめられたから。

ウ 頭の弁に自慢の漢才をほめられたから。

エ 歌のことで人の評判になったから。

答 ア

 

▼思考力問題▲

補充 次の文章は、『百人一首宗祇抄』における「夜をこめて…」の和歌の注釈である。清少納言の和歌について作者はどのように評価しているか。傍線部を踏まえて説明せよ。思

清少納言

夜をこめて鳥の空音ははかるとも世にあふさかのせきはゆるさじ

 事書に、大納言行成物語して、内の御物忌にこもれるとていそぎ帰りて、つとめて、鳥の声にもよほされてといひければ、夜深かりける鳥の声は函谷の関の事にやと、いひつかはしたりければ、これは逢坂のといへりければ、つかはしける。はかるとは、たばかる心なり。逢坂の関はゆるさじとは、あふ事をゆるさじとなり。総の歌は明らかなり。さて、函谷と逢坂とを、やすらかに一首に読み出せる事、これ又上手のしわざなり。

【語注】

*事書…詞書。

答 函谷関と逢坂関を、自然に一首に詠み表しているのは、名人の行為だとして、清少納言の和歌の力量を高く評価している。

1 「いと夜深く……孟嘗君のにや」、「『孟嘗君の鶏は……これは逢坂の関なり」はそれぞれ何を言おうとしているのか。説明してみよう。思

・「いと夜深く……孟嘗君のにや」

 「鶏の声に催されて」というのは口先だけの言い訳で、本当は私のことなど愛していないから早く帰ったのでしょうと、行成を非難している。

・「『孟嘗君の鶏は……これは逢坂の関なり」

 作者の言葉を受け、私たちの関係は函谷関のように通るのが難しい関係ではなく、逢坂の関のように逢うことができる関係なのですと切り返している。

2 「御心ざしのほどをくらぶるに、等しくこそは」とは、何と何とが等しいというのか。説明してみよう。思

答 作者の「めでたき」手紙を殿上人に見せた行成の、作者を大切に思う気持ちと、行成の「見苦しき」手紙を世間に広まらないよう隠した作者の、行成を大切に思う気持ちが、等しいということ。

3 行成は清少納言のどのようなところを称賛したのか。整理して説明してみよう。思

答 手紙を殿上人たちに見せたことを恨むどころか、自分への愛情だと喜んでさえ見せる、機知に富んだところ。

1 傍線部について、敬語の種類と誰から誰への敬意を表すかを考えてみよう。知

⑴ 頭の弁の、職に参り 給ひて、

答 「参り」…謙譲語/作者→中宮定子

 「給ひ」…尊敬語/作者→頭の弁(行成)

⑵ 「悪しかりなむ。」とて参り 給ひぬ。

答 「参り」…謙譲語/作者→帝(宮中)

 「給ひ」…尊敬語/作者→頭の弁(行成)

⑶ 「今よりも、さを頼み聞こえむ。」

答 謙譲語/頭の弁(行成)→作者

⑷ 「かの褒め給ふなるに、また、思ふ人のうちに侍りけるをなむ。」

答 「給ふ」…尊敬語/作者→頭の弁(行成)

 「侍り」…丁寧語/作者→経房の中将

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参考資料

■『後拾遺和歌集』雑二

大納言行成物語などし侍りけるに、内の御物忌に籠もればとて、急ぎ帰りてつとめて、鳥の声に催されてと言ひおこせて侍りければ、夜深かりける鳥の声は函谷関のことにやと言ひにつかはしたりけるを、立ち帰り、これは逢坂の関に侍りとあれば、よみ侍りける

清少納言

夜をこめて鳥のそらねにはかるともよに逢坂の関は許さじ

現代語訳

大納言行成が(職の御曹司で)お話などをしましたときに、宮中の御物忌みに籠もるのでと言って、急いで帰って(その)翌日の朝、鳥の声に催促されて(帰ってしまいました)と(行成が)手紙で言って寄こしましたので、夜深いうちに鳴いた鳥の声は函谷関のことでしょうかと言って遣ったのを、折り返し、これは逢坂の関ですとあるので、(清少納言が)詠みました(歌)

清少納言

夜通し鶏の嘘鳴きでだましても、断じて私は逢坂の関(二人が逢うこと)を許さないつもりです。

■『百人一首宗祇抄』

清少納言

夜をこめて鳥の空音ははかるとも世にあふさかのせきはゆるさじ

 事書に、大納言行成物語して、内の御物忌にこもれるとていそぎ帰りて、つとめて、鳥の声にもよほされてといひければ、夜深かりける鳥の声は函谷の関の事にやと、いひつかはしたりければ、これは逢坂のといへりければ、つかはしける。はかるとは、たばかる心なり。逢坂の関はゆるさじとは、あふ事をゆるさじとなり。総の歌は明らかなり。さて、函谷と逢坂とを、やすらかに一首に読み出せる事、これ又上手のしわざなり。人の歌を見るに我が心に一みちおもしろきと思ふを心にしめて、そのほかには心をやらぬ故に、古人の歌いかめしきをも、かたはらになすものなり。されば、我いひ出る事もみち広からず侍るにや。そのほどほどに心をめぐらして、道のたたずまひを思ふべきとぞ承り侍りし。なほ、よに逢坂のよにといふは詞の字なり。歌にこのことはおほし。

現代語訳

清少納言

夜通し鶏の嘘鳴きでだましても、断じて私は逢坂の関(二人が逢うこと)を許さないつもりです。

 詞書に、大納言行成が世間話をして、宮中の御物忌みに籠もると言って急いで帰って、翌日の朝、鶏の声に催促されてと言ったところ、夜深いうちに鳴いた鶏の声は函谷の関のことだろうかと、(清少納言が)言って申し上げたところ、(行成が)これは逢坂の(関だ)と言ったので、(清少納言は「夜をこめて」の歌を)遣わした。はかるというのは、だます心である。逢坂の関は許すまいというのは、逢うことを許すまいと(言っているので)ある。一連の歌(の内容)は明らかである。さて、函谷と逢坂とを、自然に一首に詠み表せることは、これまた名人の行為である。人の歌を見るとき自分の心に一つ面白いと思うところに心を傾けて、その他のところには思いを馳せないがために、古人の歌で威厳があるものをも、端に追いやる(ことになる)のだ。それゆえ、自分が詠み表すことも広がっていかないのでありましょう。その方々に思いを馳せて、手法のありさまを考えなければならないとお聞きしました。やはり、「よに逢坂」の「よに」というのは修辞の文字である。歌にはこのような言葉が多い。

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