【児のそら寝・絵仏師良秀】詳しい現代語訳と解釈ー品詞分解と問題付きー授業の予習に

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古文の本文と全訳・解釈

これから高校に入学すると中学校とは少し異なり、古文の授業が本格的に始まります。

「古文って難しそう。」「日本語なのによく分かんない。」

高校1年生は、必ずと言っていいほどこの壁にぶつかります。

そこで高校1年生の1学期の授業で全国的に扱われる作品を2つ取り上げました。

本文の全てを現代語訳してあります。内容や展開などを確認してみてください。

古文は予習が8割・授業が2割です。予習の段階で学習のほとんどが終わり、授業で再度確認するという意識で勉強することをおススメします。

予習ですること

  1. 本文をすべてノートに写す
  2. 現代語訳をすべて書く。(できれば自分で考えて)
  3. 全ての品詞分解を書く。(はじめは自分で考えて)
  4. 重要単語・不明な単語をチェックしておく。

【この記事で分かること】

  • 児のそら寝の全訳と解釈、品詞分解とテストで出されそうな問題
  • 絵仏師良秀の全訳と解釈、品詞分解とテストで出されそうな問題

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『児のそら寝』(宇治拾遺物語)の現代語訳と解釈

             ※〈本文〉黄色くマーカーが引いてあるところは訳です。

 今は昔、比叡の山に児ありけり。僧たち、 宵のつれづれに、

  昔、  延暦寺に児(が)いた。僧たち(が)、宵の所在なさに、

「いざ、かいもちひせむ。」と言ひけるを、       この児、 心よせに聞きけり。

 「さあ、 ぼたもち(を)作ろう。」と言った(の)を、この児(は)、期待して聞いた。

さりとて、 し出ださむを待ちて寝ざらむも、 わろかりなむと思ひて、

そうかといって、作り上げる(の)を待って寝ない(の)も、よくないにちがいないと思って、

片方に寄りて、寝たるよしにて、 出で来るを待ちけるに、

片隅に寄って、寝ているふりで、 でき上がる(の)を待ったところ、

すでにし出だしたるさまにて、ひしめき合ひたり。

はやくも作り上げた様子で、 騒ぎ合っている。

 この児、   さだめておどろかさむずらむと、待ちゐたるに、  僧の、

 この児(が)、きっと起こそうとするだろうと、待ち続けていると、僧が

「もの申しさぶらはむ。おどろかせたまへ。」と言ふを、

 もしもし。お目覚めなさいませ。」  と言う(の)を、

うれしとは思へども、   ただ一度にいらへむも、

うれしいとは思うけれども、ただ一度で返事するとしたらそれも、

待ちけるかともぞ思ふとて、         いま一声呼ばれていらへむと、

待っていたのかと思うといけないと(思っ)て、もう一声呼ばれて返答しようと

念じて寝たるほどに、   「や、な起こしたてまつりそ。

我慢して寝ているうちに、 「これ、お起こし申し上げるな。

をさなき人は、寝入りたまひにけり。」と言ふ声のしければ、

幼い人は、  寝込んでしまわれたよ。」と言う声がしたので、

あな、わびしと思ひて、いま一度起こせかしと、    思ひ寝に聞けば、

ああ、情けないと思って、もう一度起こしてくれよと、 思いながら寝て聞くと、

ひしひしと、  ただ食ひに食ふ音のしければ、     ずちなくて、

むしゃむしゃと、ただひたすら食べに食べる音がしたので、しかたなくて、

無期ののちに、      「えい。」といらへたりければ、

ずっとあとに(なって)、「はい。」と返事をしてしまったので

僧たち   笑ふこと   限りなし。

僧たち(は)笑うこと(が)際限ない(ことだった)。

【解説】

自分なりに色々と考えて自分の行動を決めるが、その全てが大人に見透かされて、ことごとく裏目に出る子ども=児の、可愛らしい様子が見てとれます。

今も昔も子どもは大人の様子をうかがって行動しますが、大人の側からは何を考えているのか、全て見抜くことができます。その様子を「ぼたもちが出来上がった」という場面を通して伝えてくれています。

大人の予想外の行動に慌てて返事をしてしまう、微笑ましい子どもの様子が読み取れます。

品詞分解と問題

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以下は定期考査などでも問われるであろう問題です。

ぜひ取り組んでみましょう。

◯次の1・2の黄色線部の語の下に、口語訳する場合どのような助詞を補ったらよいか。該当する助詞をそれぞれ答えよ。
ありけり。
かいもちひせむ。

◯「いざ、かいもちひせむ。」とあるが、「僧たち」が、だれに対して言った言葉かを答えよ。

◯「寝たるよしにて、」とあるが、「児」がそうしたのはなぜか。その理由として「児」が心の中で思っている箇所を、本文中から二十二字以内で抜き出せ。

◯「念じて寝たる」とあるが、「児」がそうしたのはなぜか。その理由として「児」が心の中に思っている箇所を、本文中から二十二字以内で抜き出せ。

◯「えい。」という言葉は、どの言葉に対する返事か。該当する言葉を抜き出し、初めの八字で答えよ。

◯「僧たち笑ふこと限りなし。」とあるが、「僧たち」が笑ったのはなぜか。その理由を二十字以内で簡潔に答えよ。

◯この話は、「児」の細かい心遣いがかえって失敗のもとになった滑稽(こっけい)な話であるが、おもしろさは「児」の心の動きにある。「児」の心は何に反応して一喜一憂しているか。本文中の一語(漢字一字)で、二つ答えよ。   

【解答】
◯ 1「が」   2「を」
◯ 僧たち
◯ し出ださむを待ちて寝ざらむも、わろかりなむ(二十一字)
◯ ただ一度にいらへむも、待ちけるかともぞ思ふ(二十一字)
◯ もの申しさぶらは
◯ 児が間の抜けた時分に返事をしたから。(十八字)
◯ 声・音

『絵仏師良秀』(宇治拾遺物語)の現代語訳と解釈

これも今は昔、        絵仏師良秀といふありけり。家の隣より

これも今となっては昔のこと、絵仏師良秀という者がいたそうだ。 家の隣から

火出で来て、  風おしおほひてせめければ、

火災が発生して、風が覆いかぶさるように吹いて(火が)迫ってきたので、

逃げ出でて、      大路へ出でにけり。  人の書かする仏も

(良秀は)逃げ出して、大通りに出てしまった。 人が(良秀に)描かせている仏も(家の中に)

おはしけり。  また、衣着ぬ妻子なども、      さながら内にありけり。

いらっしゃった。また、着物も着ない妻や子供なども、そのまま(家の)中にいた。

それも知らず、                ただ逃げ出でたるをことにして、

(良秀は)そんなことも構わずに、ただ(自分が)逃げ出したのをよいことにして、

向かひのつらに立てり。

(大通りの)向こう側に立っていた。

  見れば、すでにわが家に移りて、         煙・炎くゆりけるまで、

  見ると、(火は)すでにわが家に燃え移って、煙や炎がくすぶり出したころまで、

おほかた、               向かひのつらに立ちて、眺めければ、

(良秀はその間)ほとんど、向かい側に立って、       眺めていたところ、

「あさましきこと。」とて、 人ども来とぶらひけれど、さわがず。

「大変なことだ。」と言って、人々が見舞いに来たが、(良秀は少しも)慌てない。

「いかに。」と人言ひければ、          向かひに立ちて、       家の焼くるを見て、

「どうしたのですか。」と人が言ったところ、(良秀は)向かいに立って、家が焼けるのを見て、

うちうなづきて、   時々笑ひけり。「あはれ、しつるせうとくかな。 

しきりにうなずいて、 時々笑った。    「ああ、大変なもうけもの(をしたこと)よ

年ごろはわろく書きけるものかな。」と言ふときに、       とぶらひに来たる

長年の間(絵を)まずく描いてきたものだなあ。」と言うときに、   見舞いに来ていた

者ども、「こはいかに、        かくては立ちたまへるぞ。あさましきことかな。

者たちが、 「これはまたどうして、こうして立っておいでなのか。 あきれたことだなあ。

もののつきたまへるか。」と言ひければ、      「なんでふものの

怪しげな霊がとりつきなさったか。」と言ったところ、「どうして怪しげな霊が

つくべきぞ。      年ごろ、 不動尊の火炎をあしく書きけるなり。

とりつくはずがあろうか。長年の間、不動明王の火炎を下手に描いてきたことだなあ。

今見れば、  かうこそ燃えけれと、               心得つるなり。

今見ると、 (火というものは)このようにこそ燃えるものだったよと、悟ったのだ。

これこそせうとくよ。   この道を立てて世にあらむには、

これこそもうけものよ。   仏画を描くことを専門として世間を渡るからには、

仏だによく書きたてまつらば、    百千の家も出で来なむ。

仏だけでも上手に描き申し上げたら、  百や千の家だってきっとできるだろう。

わたうたちこそ、   させる能もおはせねば、

おまえさんたちこそ、 これといった才能もお持ち合わせにならないので、

ものをも惜しみたまへ。」と言ひて、   あざ笑ひてこそ立てりけれ。

ものを惜しんだりなさるのだ。」と言って、あざ笑って立っていた。

 そののちにや、    良秀がよぢり不動とて、   今に人々めで合へり。

 そののちであろうか、良秀のよじり不動といって、 今に至るまで人々が称賛し合っている。

【解説】

人間のエゴイズムを表したかのような内容です。

エゴイズム=利己主義・自己中心主義

以下の部分で良秀が一般人とは異なる感覚の持ち主だということがわかります。

・自宅の火災という大事件に遭遇しても、家族のことや自分が丹精込めて作った作品のことを心配せず、燃え盛る火に見入っていたこと。

・我が家が焼けるのを見て、うなずいたり笑ったりしていた。

・我が家が焼ける様子を見て、とても良い儲けものをしたと発言したこと。

この本文を基にして、芥川龍之介は『地獄変』を創作しました。文豪の元ネタです。

自分の絵をもっと上手く描きたいがために、家族や自宅や今までの作品を犠牲にしてしまう良秀。

これを読んだあなたはどちらの立場を取りますか?

◯一家の主人が家族を見捨てるなんて許せない。
◯自分の芸術をもっと向上させるためなら、どんな犠牲も払う立派な芸術家だ。

何が正解かはありません。ただし、自分の意見を言えることが大事です。
ぜひ授業でもクラスメイトと意見の交換をしてみてください

品詞分解と問題

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定期試験に出題が予想される問題です。

是非解いてみましょう。

◯「それも知らず、」について、次の問いに答えよ。

 1「それ」は、具体的にどのようなことをさすか。三十字以内で説明せよ。

 2「知らず」は、どのような意味か。次から選べ。

  ア 構わずに  イ 知らないで  ウ わきまえもなく

◯「向かひのつらに立ちて、眺めければ、」とあるが、この話の結末から考えて、良秀が「眺め」ているものは、何か。本文中の語句で答えよ。

◯「うちうなづきて、」とあるが、このような動作をした理由を説明した箇所として適当なものを、次から選べ。

 ア なんでふもののつくべきぞ。
イ かうこそ燃えけれと、心得つるなり。
ウ 仏だによく書きたてまつらば、百千の家も出で来なむ。

◯次の傍線部の意味として適当なものを、あとのア~オの中からそれぞれ選べ。

 1「あさましきこと。」とて、人ども来とぶらひけれど、
2「あさましきことかな。もののつきたまへるか。」

  ア かわいそうなこと。  イ あきれはてたこと。

  ウ たいへんなこと。   エ 思慮の足りないこと。

  オ 嘆かわしいこと。 

五「この道を立てて世にあらむには、」とあるが、「この道」とは何の道か。本文中から三字で抜き出せ。

◯わたうたちこそ、」とあるが、「わたうたち」にあたるのは何か。本文中から十二字以内で抜き出せ。

七「させる能もおはせねば、ものをも惜しみたまへ。」とあるが、「ものをも惜しみたまへ」とはどのような意味か。次から選べ。

 ア 何かともの惜しみなさるのだ。
イ 他人の家財のことまで心配するのだ。
ウ わずかなものでも惜しんで蓄えなさい。

◯「時々笑ひけり。」、「あざ笑ひてこそ」とあるが、次の一文はその「笑ひ」について解説したものである。空欄にそれぞれ二字の心情語を補って、一文を完成せよ。

  前者は〔 ① 〕の笑いであり、後者は〔 ② 〕の笑いである。

◯この話にヒントを得て、芥川龍之介は『地獄変』という短編小説を書いている。芥川龍之介も注目したと思われる良秀の人物像は、この説話では何によって表現されているか。次から選べ。

 ア 道徳を超越して生きる良秀のたくましさ。
イ 不動尊を見事に描ききった良秀の才能。
ウ 芸術の鬼ともいえる良秀の執念。

【解答】
◯ 1注文を受けた仏画や自分の妻子がまだ家の中に残っていること。(二十九字)
    2 ア
◯炎
◯イ
◯ 1ウ   2イ
◯ 絵仏師
◯ とぶらひに来たる者ども(十一字)
◯ ア
◯ ①喜び(別解=満足・得心・納得)
    ②軽蔑(別解=侮蔑・嘲(あざけ)り)
◯ウ

まとめ

Summary handwritten on glas with pen

いかがでしたか?

古文は全訳を読むだけでも勉強になります。初めからしっかり予習・復習できる人はいません。

ただし、授業前には最低でも役の確認はしておいた方がいいでしょう。

そうすることで、授業の効果が何倍にもあがります。

大学受験に進むためには、文系であれば古文は必須になります。学ぶことで対策になり、さらに日本文化や日本人独自の変わらない視点、内面などを学ぶことができます。

しっかりとした予習に是非活かしてください。

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