「現実世界には、自分と本当に気の合う友人はいない。」このような心のモヤモヤを何とか文章で表現したものが今回の本文です。
実際に私たちが生きているこの世界でも「気の合う友人」はなかなか見つかりませんよね。「一生付き合える友人」を探そう・見つけようとよく言われますが、見つかる方が珍しいです。
今回は、そのような心のモヤモヤをしっかりと読み取ったうえで、助動詞や係り結びなど文法的なことも学んでいきましょう。助動詞を本格的に学んでいく最初の文章だと思いますので、ぜひこの記事を予習・復習にお役立てください。
・徒然草「同じ心ならん人と」を予習・復習したい
・全訳・現代語訳や品詞分解を細かく知りたい
・定期テストの予想問題を知りたい
・重要な語句や文法を確認したい
本文(ルビ付き)
同じ心ならん人と
同じ心ならん人としめやかに物語して、をかしきことも、世のはかなきことも、うらなく言ひ慰まれんこそうれしかるべきに、さる人あるまじければ、つゆ違はざらんと向かひゐたらんは、ひとりある心地やせん。
互ひに言はんほどのことをば、「げに。」と聞くかひあるものから、いささか違ふ所もあらん人こそ、「我はさやは思ふ。」など争ひ憎み、「さるから、さぞ。」ともうち語らはば、つれづれ慰まめと思へど、げには、少しかこつ方も我と等しからざらん人は、おほかたのよしなしごと言はんほどこそあらめ、まめやかの心の友には、はるかに隔たる所のありぬべきぞ、わびしきや。
現代語訳・全訳
同じ心であるような人としんみりと話をして、趣があることも、世の中のちょっとしたことも、心の隔てなく(気を遣わずに)話をして自然と心が晴れる(うれしい気持ちになる)としたらうれしいだろうが、(実際は)そのような人はいるはずがないので、(相手の意見・意志に)少しも背かないようにしようと(気を遣って)対座している(一緒にいる)としたら、一人でいる(ような孤独な)心持ちがするのだろうか(なあ)。
互いに言おうとするようなことを、(言い合って、それが)「なるほど(そのとおりだ)。」と聞き甲斐があるものの(納得・理解ができるもの)、少しばかり(心に)違うところもあるような人(と話し合う場合)は、「自分はそう思うだろうか、いや、思わない。」などと論争し、「そういうわけだから、そうなのであろう。」とも語り合うならば(議論するならば)、することもない所在なさ(退屈な気持ち)が和らぐだろうと思うのだが、実際には、少し不満に思うような(意見の)ことも私と同じでないような人(と話し合う場合)は、世間一般のとりとめのないこと(たわいない話)を言うようなうちはよいだろうが、真実の心の友というのには、はるかに(心が)離れるところがきっとあるだろうことが(そのような人とは真の心の友とは言えないだろうことが)、やりきれないなあ。
本文と現代語訳セット(スライド版)





品詞分解
4b4857bf8f8be150985e0ab3c9afa6d8重要語句まとめ
わびし | まめやかなり | おほかた | かこつ | ものから | げに | ゐる | うらなし | はかなし | をかし | 語 句 |
形容詞 | 形容動詞 | 名詞 | 動詞 | 接続助詞 | 副詞 | 動詞 | 形容詞 | 形容詞 | 形容詞 | 品詞 |
シク | ナリ | タ四 | ワ上一 | ク | ク | シク | 活用 | |||
①やりきれない。つらい。心細い。困る。②みすぼらしい。▼ここでは①の意。 | ①まじめなさま。②真実みがあるようす。本格的なさま。▼ここでは②の意。 | ①大部分。おおよそのこと。②世間一般。一通りのこと。普通であるさま。▼ここでは②の意。 | ①他人のせいにする。かこつける。②不満に思う。嘆く。愚痴を言う。▼ここでは②の意。 | ①(逆接の確定条件)…のに。…けれども。…ものの。②(順接の確定条件)…から。▼ここでは①の意。 | 本当に。実際に。なるほど。 | ①座る。とまる。②存在する。ある。③地位につく。▼ここでは①の意。 | 心の隔てがない。 | ①つまらない。とるにたらない。②ちょっとした。③はかない。頼りない。むなしい。▼ここでは②の意。 | ①趣深い。趣がある。②美しい。かわいい。③(中世以降)奇妙だ。おかしい。▼ここでは①の意。 | 意 味 |
基本の重要単語です。用言(動詞・形容詞・形容動詞)の場合は、活用の種類までしっかりと確認しておきましょう。助動詞にもつながる知識です。
テスト予想問題と解答
発問 「同じ心ならん人」とほぼ同じ意味で使われている言葉を抜き出せ。思
答 まめやかの心の友。
発問 「しめやかに」を文法的に説明せよ。知
答 ナリ活用形容動詞「しめやかなり」の連用形。
発問 「世のはかなきこと」とはどのようなことか。思
答 世の中で起こるちょっとしたこと。
補充 「うらなく言ひ慰まれん」の現代語訳として最も適当なものを、次から選べ。思
ア 真剣に話をして相手を励ますことができたら
イ 本心を出さずに話をしてその場をやり過ごせたら
ウ 心の隔てなく話をして自然と心が晴れるとしたら
エ くだらない話をして日頃の悩みを吹き飛ばせたら
オ 裏表のない話をしても心が慰められないとしたら
答 ウ
脚問 「さる人あるまじければ」とは、どういうことか。思
答 「何事も本心を語り合えるような、考えや気持ちの完全に合う人など、この世にいるはずがないから」ということ。
発問 「まじけれ」を文法的に説明せよ。知
答 打消当然の助動詞「まじ」の已然形。
補充 「さる人あるまじければ」の現代語訳として最も適当なものを、次から選べ。思
ア そのような人はいるはずがないので、
イ そのような人はきっといるに違いないので、
ウ 去っていく人はいるはずがないので、
エ 去っていく人はきっといるに違いないので、
オ そのような人は去っていくはずがないので、
答 ア
発問 「つゆ」と呼応している語はどれか。知
答 ざら。(打消の助動詞「ず」の未然形)
補充 「つゆ違はざらん」を現代語訳せよ。思
答 (相手の意に)少しも背かないようにしよう。
発問 「ひとりある心地やせん」とは、どのような心境を表しているのか。説明せよ。思
答 相手と表面的に話を合わせることだけに終始し、自分が本当に言いたいことは相手を気遣って言うこともできず、孤独な気持ちに襲われている心境。
補充 「ひとりある心地やせん」の理由として最も適当なものを、次から選べ。思
ア 相手と対座しているだけで、心が通い合うような気がするから。
イ 表面的に話を合わせているにすぎず、心は通い合っていないから。
ウ 話し相手がいても、自分と相手は別の人間であることに変わりはないから。
エ 早くつまらない話を終わらせて、自分一人になりたいと思うから。
オ 緊張のあまり、相手が話している内容が頭に入ってこないから。
答 イ
補充 「げに」に込められている心情を漢字二字で答えよ。思
答 納得・同意・共感など。
発問 「我はさやは思ふ」の「さ」は何を指しているのか。思
答 相手の話の内容。
発問 「我はさやは思ふ」を現代語訳せよ。思
答 自分はそう(あなたが言っているように)思うだろうか、いや、思わない。
補充 「我はさやは思ふ」の係助詞「やは」の用法として最も適当なものを、次から選べ。知
ア 強意 イ 疑問 ウ 反語 エ 詠嘆
答 ウ
脚問 「げには…」以下の文から、挿入句となっている箇所を抜き出せ。思
答 おほかたのよしなしごと言はんほどこそあらめ、
発問 「まめやか」を文法的に説明せよ。知
答 ナリ活用形容動詞「まめやかなり」の語幹。
発問 「ありぬべきぞ」の「ぬ」について文法的に説明せよ。知
答 強意の助動詞「ぬ」の終止形。
発問 「わびしきや」に込められている作者の心情を説明せよ。思
答 「まめやかの心の友(真実の心の友)」が得難いことを改めて思い知らされ、孤独でやりきれない心情。
発問 本文の特徴として気づいたことをあげ、なぜそのような特徴が生じているのか説明せよ。思
答 (特徴)仮定の表現が多い。/逆接が多い。/屈折した感じの文章。
(理由)作者が理想的な友人との対話を強く求める一方、そのような対話の場が現実にはなかなか得られないことへの懊悩と深い自己凝視(「ああでもない、こうでもない」「こんなことがあれば……」などと考え詰めていること)の軌跡が、文章に反映されているから。
補充 五人の高校生が対人関係について話し合った。本文の考え方と最も近いものを、次から選べ。思
ア よく知らない相手でも、向かい合って座っていると何かしら話すことにはなるから、一人でいるときの孤独感は解消されて、束の間の気晴らしにはなるよね。
イ 気持ちが通い合う相手でも、もし考えが食い違って言い争いになったら気まずい思いをするから、お互いに相手の意図を正確に把握しようと努力することが重要だと思うな。
ウ 自分とまったく同じ考えの人なんているわけがないし、考えが異なるからこそ白熱した議論が生じて、今まで自分になかった視点や価値観を得ることができるんだよ。
エ 最初は気が合わないなと思っている人でも、腹を割って話して、時にけんかもしながらお互いを深くわかり合っていけば、きっと真の心の友になれるはずだよね。
オ よい話題でも悪い話題でも、自分と考えがぴったり一致するような理想の友なんて現実にいるはずがないけれど、心のどこかでそれを追い求めてしまうんだよなあ。
答 オ
1 傍線部の助動詞について、意味と活用形を確認してみよう。知
⑴ 同じ心ならん人
答 婉曲(仮定)・連体形。
⑵ うらなく言ひ慰まれんこそ
答 仮定・連体形。
⑶ つゆ違はざらんと
答 意志・終止形。
⑷ 向かひゐたらんは、
答 仮定・連体形。
⑸ つれづれ慰まめと
答 推量・已然形(「こそ」の結び)。
2 第十二段から「係り結び」(係助詞と結び部分)をすべて抜き出してみよう。知
答
・ひとりある心地やせん。
・あらん人こそ、「我はさやは思ふ。」など争ひ憎み、「さるから、さぞ。」ともうち語らはば、つれづれ慰まめ
・我はさやは 思ふ。
・言はんほどこそあらめ、
・隔たる所のありぬべきぞ、わびしきや。
(その他・注意する箇所)係り結びの流れ
・うらなく言ひ慰まれんこそうれしかるべきに、
いかがでしたでしょうか。予習・復習やテスト対策はできましたか。皆さんの疑問が少しでも解消されたのであれば幸いです。
これからも中高生が学ぶための参考になるような記事を書いていきますので、よろしくお願いします。
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