漢文『呂氏春秋』「知音」の分かりやすい現代語訳と書き下し文【テストの予想問題と解説付き】

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古典ノート

 知音(ちいん):心が通じ合っている親友
 日常あまり使われない言葉かもしれませんが、現代語に「知音(ちいん)」という言葉があります。これは、漢文『呂氏春秋』の「知音」に意味が由来しています。今回はその「知音」の分かりやすい現代語訳と書き下し文やテストの予想問題と解説をまとめました。
 授業の予習復習やテスト対策などの参考にしてみてください。

 

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本文

 

 


現代語訳

 伯牙は(上手に)琴を弾き、鍾子期はそれ(=伯牙の琴の音色)を(とてもよく)聞き取った。(伯牙が)琴を弾く時に、思い(イメージするもの)が太山にあった。(すると、)鍾子期が、「いいなあ、(君の)琴の弾き方は。高くそびえる太山のようだ。」と言った。しばらく経って、(伯牙の)思い(イメージするもの)が流れる水にあった。

(すると、)鍾子期がまた言うことには、「いいなあ、(君の)琴の弾き方は。滔々と流れる水のようだ。」と感想を述べた。(後に思いを読み取ってくれていた)鍾子期が亡くなった。伯牙は琴を壊し弦を切って、生涯二度と琴を弾かなかった。(伯牙が)思うことには、世の中にふたたび弾いて聞かせるに値する人はいないと。(思い・イメージを読み取って理解してくれる人がいなくなったので、琴を弾く意味はもうなくなった。)

さとう
さとう

自分の音楽のイメージを間違えずに受け取ってくれた素晴らしい人物と、その人物がいなくなってしまって聞かせる相手がいないと、音楽をやめてしまった人物の話ですね。芸術に対する真の向き合い方が描かれているのかもしれませんね。そして真に素晴らしいと言える人物がいるのは、それを評価してくれる人物がいるからなのですね。

 

書き下し文

 伯牙琴を鼓し、鍾子期之を聴く。琴を鼓するに方たりて志太山に在り。鍾子期曰はく、「善きかな、琴を鼓する。巍巍乎として太山のごとし。」と。少選の間にして、志流水に在り。

 鍾子期又曰はく、「善きかな、琴を鼓する。湯湯乎として流水のごとし。」と。鍾子期死す。伯牙琴を破り弦を絶ち、終身復た琴を鼓せず。以為へらく世に復た為に琴を鼓するに足る者無しと。

 


本文白文

※大学入試を考えた時に、白文から書き下し文や訳が作れるようになっておくと有利です。ぜひ白文を読めるように本文と比較して「返り点や送り仮名」のルールを把握しておきましょう!

 伯牙鼓琴、鍾子期聴之。方鼓琴而志在太山。鍾子期曰、「善哉乎、鼓琴。巍巍乎若太山。」少選之間、而志在流水。

 鍾子期又曰、「善哉乎、鼓琴。湯湯乎若流水。」鍾子期死。伯牙破琴絶弦、終身不復鼓琴。以為世無足復為鼓琴者。(『呂氏春秋』)

 

類似の参考文献

『呂氏春秋』孝行覧・本味

凡そ賢人の徳は、以て之を知るもの有ればなり。

独り琴のみ此くのごときに非ざるなり。賢者も亦然り。賢者有りと雖も、礼以て之に接する無ければ、賢奚に由りて忠を尽くさんや。猶ほ之を御すること善ならざれば、驥も自ら千里ならざるがごときなり。

現代語訳

およそ賢人の徳(が徳とされるの)は、その価値を理解する人がいるからである。

ただ琴だけがこのよう(に理解者を必要とするの)ではない。賢者もまた同じである。賢者がいたとしても、(君主が)それにふさわしい礼をもって接しなければ、賢者はどうして忠義を尽くすだろうか(いや、尽くさない)。それは(馬の)御し方が正しくなければ、駿馬もみずからその千里の能力を発揮しないのと同じである。

 

『蒙求』伯牙絶絃

 列子に曰はく、「伯牙善く琴を鼓し、鍾子期善く聴く。伯牙琴を鼓するに、志高山に在り。子期曰はく、『善きかな、峩峩として泰山のごとし。』と。志流水に在り。子期曰はく、『善きかな、洋洋として江河のごとし。』と。伯牙の念ふ所、子期必ず之を得。」と。
 呂氏春秋に曰はく、「鍾子期死す。伯牙琴を破り絃を絶ち、終身復た琴を鼓せず。以為へらく為に鼓するに足る者無し。」と。

現代語訳

 列子にいうには、「伯牙は巧みに琴を弾き、鍾子期は巧みにそれを聞き取った。伯牙が琴を弾くとき、思いが高い山にあった。子期が言うことには、『いいなあ、高くそびえる泰山のようだ。』と。(しばらくして)思いが流水にあった。子期が言うことには、『いいなあ、広々として長江や黄河の流れのようだ。』と。伯牙が心に思い浮かべることを、子期は必ず理解した。」と。
 呂氏春秋にいうには、「鍾子期が亡くなった。伯牙は琴を壊し弦を切って、生涯二度と琴を弾かなかった。(伯牙が)思うことには、再び弾いて聞かせるに値する人はいないと。」と。

 

テスト予想問題と解答

発問 「之」の指示内容は何か。思

答 伯牙が弾く琴の音色。

補充 「志」の内容として最も適当なものを、次の中から選べ。思

ア 自分が相手に演奏を聞かせたいと思う気持ち。

イ 楽器をうまく弾けるようになりたいという願い。

ウ 楽器を弾いているときに自分の中にあるイメージ。

エ 曲を演奏するにあたって相手に頼まれた題。

答 ウ

脚問 「志在太山」「志在流水」とはどういうことか。思

答 「気持ち(思い)が太山にある」「気持ち(思い)が流れる水にある」

 

発問 「善哉乎、鼓琴。」は倒置文である。普通の形にしなさい。知

答 鼓琴、善哉乎。

補充 演奏を聴いた鍾子期は、①一曲目、②二曲目を聞き、どのような情景が浮かんだと言っているか。それぞれ本文中から抜き出せ。(訓点不要)思

答 ①巍巍乎若太山 ②湯湯乎若流水

補充 本文を大きく二つの場面に分ける場合、後半はどこから始まるか。最初の四字を抜き出せ。(訓点不要)思

答 鍾子期死

補充 「伯牙破琴絶弦、終身不復鼓琴」の理由として最も適当なものを、次から選べ。思

ア 伯牙の演奏をより優れたものに導いてくれる、楽器の名人を失ってしまったから。

イ 伯牙の演奏の技術をよく理解し、的確な感想を述べることができる知識人を失ったから。

ウ 伯牙の演奏がどのくらい大変かを理解し、自分の苦労をねぎらってくれる友を失ったから。

エ 伯牙が演奏の際に想像した情景を的確に把握し、共有してくれる感性の持ち主を失ったから。

答 エ

 

発問 「不復鼓琴。」を書き下し文にしなさい。知

答 復た琴を鼓せず。

補充 「以為」の読み方を現代仮名遣いの平仮名で答えよ。知

答 おもえらく

補充 「知音」という故事成語の意味として最も適当なものを、次から選べ。知

ア 心から理解し合える親友。

イ 芸術を深く理解できる感性。

ウ 友人の死を深く悲しむ感受性。

エ 心の通う友人を得られる人間性。

答 ア

  

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1 この逸話から生まれた成語である「知音」は、現在どのような意味で使われているか。調べてみよう。知

答 心の通じ合った友人。

2 伯牙が「破琴絶弦、終身不復鼓琴」としたのはなぜか、考えてみよう。思

答 自分が琴によって表現することを真に理解してくれる人はもういないと絶望したから

 

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