『徒然草』公世の二位のせうとに・相模守時頼の母は・吉田と申す馬乗り・よろづのことは頼むべからずの現代語訳と品詞分解ー予想問題付ー

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古典ノート

『徒然草』は「つれづれなるままに」をはじめ、有名な話がとても多くあります。高校の授業で扱う話も多く、模試や大学入試などでも頻出になっています。

今回はそんな『徒然草』でも教科書に載るような4つの話を取り上げていきます。高校2年生の授業で扱ったりしますので、授業の予習復習に役立ててもらえるとありがたいです。さらに各大学でも過去に『徒然草』が出題されています。過去問の解説にもぜひ役立ててください。

この記事で分かる『徒然草』の現代語訳

「公世の二位のせうとに」
「相模守時頼の母は」
「吉田と申す馬乗り」
「よろづのことは頼むべからず」

以下の好きなところをクリックして、現代語訳や品詞分解を確認してください。

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「公世の二位のせうとに」

【本文】

公世の二位のせうとに、良覚僧正と聞こえしは、きはめて腹あしき人なりけり。坊の傍らに、大きなる榎の木のありければ、人、「榎の木の僧正」とぞ言ひける。この名、しかるべからずとて、かの木を切られにけり。その根のありければ、「きりくひの僧正」と言ひけり。いよいよ腹立ちて、きりくひを掘り捨てたりければ、その跡、大きなる堀にてありければ、「堀池の僧正」とぞ言ひける。

【現代語訳】

公世の二位の兄で、良覚僧正と申し上げた方は、非常に怒りっぽい人であったそうだ。(この僧正の住んでいる)僧坊のそばに、大きな榎の木があったので、人々は、「榎の木の僧正」と呼んでいたそうだ。(僧正は)このあだ名は、ふさわしくないと言って、その木を切ってしまわれたそうだ。(ところが、)その根が残っていたので、(人々は)「きりくいの僧正」と言ったそうだ。(僧正は)ますます腹を立てて、切り株を掘り捨ててしまったところ、その跡が、大きな堀(のよう)であったので、(人々は)「堀池の僧正」と言ったそうだ。

(第四十五段)

さとう
さとう

何をやってもあだ名がついてしまった人物のお話ですね。怒りに任せて行動しても、なかなか思うようにはいかない人間の弱さということを伝えてくれますね。

【品詞分解】

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【予想問題】

1公世の二位の兄で、良覚僧正と申した人は、非常に怒りっぽい人であった、という書き出しにはユーモアがある。そのことを説明した次の文の空欄に、適当な言葉を補え。

 ・世人の評判やうわさなどにはとらわれない人柄を連想させる[      ]という名と、実際はきわめて怒りっぽい性格という(じつ)との矛盾がおかしさを感じさせる。

2良覚僧正は周囲の人々から三度あだ名がつけられている。二度めのあだ名は何とつけられているか。

 〔                         〕

3三度めのあだ名がつけられたとき、僧正はどのように反応したと思われるか。そのことを説明した次の文の空欄に、適当な言葉を補え。

 ・ますます腹を立てて、[    ]を[      ]立てた。

4『徒然草』の多くの話には、すぐれた人間描写の普遍性が読み取れるが、この話における筆者兼好の視点はどこに注がれているか。そのことを説明した次の文の空欄に、適当な言葉を補え。

 ・あだ名にこれほどまでにこだわる僧正を通して、人間の[      ]に視点を注いでいる。

●解答●

良覚

きりくひの僧正

堀・埋め

弱さ

「相模守時頼の母は」

【本文】

相模守時頼の母は、松下禅尼とぞ申しける。守を入れ申さるることありけるに、すすけたる明かり障子の破ればかりを、禅尼手づから、小刀して切り回しつつ、張られければ、せうとの城介義景、その日の経営して候ひけるが、「給はりて、なにがし男に張らせ候はん。さやうのことに心得たる者に候ふ。」と申されければ、「その男、尼が細工によもまさり侍らじ。」とて、なほ一間づつ張られけるを、義景、「みなを張り替へ候はんは、はるかにたやすく候ふべし。まだらに候ふも見苦しくや。」と重ねて申されければ、「尼も、のちは、さはさはと張り替へんと思へども、今日ばかりは、わざとかくてあるべきなり。物は破れたるところばかりを修理して用ゐることぞと、若き人に見ならはせて心つけんためなり。」と申されける、いとありがたかりけり。

 世を治むる道、倹約を本とす。女性なれども聖人の心に通へり。天下を保つほどの人を、子にて持たれける、まことに、ただ人にはあらざりけるとぞ。

【現代語訳】

(鎌倉幕府の執権である)相模守〔北条〕時頼の母は、松下禅尼と申した。相模守をご招待申し上げなさることがあったときに、すすけている紙障子の破れたところだけを、禅尼が自分の手で、小刀を使ってあちこち切っては、張り繕っていらっしゃったので、禅尼の兄の秋田城介義景は、その日の(時頼を迎える)準備に忙しく奔走して尼のおそばに控えておりましたが、「(その障子の繕いの仕事は、)こちらへいただいて、誰それという男に張らせましょう。そのような仕事に熟練している者でございます。」と申されたところ、(禅尼は)「その男は、私の手仕事よりよもやすぐれてはおりますまい。」と答えて、やはり障子のひとこまひとこまを張り繕う仕事をお続けになったのを、義景が、「全部を張り替えますほうが、ずっと容易でございましょう。(切り張りで、新旧の紙が)まだらでありますのも見苦しくはございませんか。」と重ねて申されると、「私も、のちには、きれいさっぱりと張り替えようと思いますが、今日だけは、わざとこうしおくのがよいのです。ものは破損しているところだけを繕って使うものだよと、若い人〔時頼〕に見習わせて気づかせるというためです。」と申されたのは、まことに世にもかれな殊勝なことであったよ。

 世を治める(政治の)道は、倹約を基本とする。女性ではあるが(この松下禅尼の考えは)聖人の見識に通じている。天下を治めるほどの人物を、子としてお持ちになっていた禅尼は、本当に、並々の人ではなかったのだよと(世間の人は禅尼の人柄をほめたそうだ)。

(第百八十四段)

【品詞分解】

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【予想問題】

1松下禅尼が、わが子の執権時頼を招待したときに、「すすけたる明かり障子の破ればかり」を切り張りしたことを伝え聞いた話であるが、切り張りよりは全面張り替えのほうが作業効率がよい。そのことが義景の発言のどこでわかるか。

 〔                         〕

2義景に言われるまでもなく、松下禅尼も意図的に切り張りしていることがわかる。松下禅尼の発言の中のどの一語でそのことがわかるか。

 〔                         〕

3作業効率のよくない切り張りをしてまで、若い時頼に「倹約」を教えようとしたことがわかる。「倹約」の教えが、松下禅尼の発言の中で、どのように言い表されているか。

 〔                         〕

4松下禅尼と違って義景は、当代の権力者の執権を迎える準備の総括責任者として、禅尼の切り張りは執権に対して失礼にあたるのではないかと気づかっている。そのことが義景の発言のどこでわかるか。

 〔                         〕

5松下禅尼の切り張りは、真実倹約のための切り張りではなく、倹約の教訓の手段としての切り張りである。わざわざめんどうくさい二度手間をかけた切り張りであることが、禅尼の発言のどこでわかるか。

 〔                         〕

6松下禅尼のこの切り張りが政治の基本を教え悟らせるためのテクニックだったことについて、女性ではあるが政治の誤りない真理を悟った偉大なる女傑ともいうべき人物であったと、筆者兼好は世人の賛辞をすなおに認めている。禅尼を賛辞したこの世評は、どのように言い表されているか。

 〔                         〕

●解答●

みなを張り替へ候はんは、はるかにたやすく候ふべし

わざと

物は破れたるところばかりを修理して用ゐることぞ

まだらに候ふも見苦しくや。

尼も、のちは、さはさはと張り替へんと思へども

女性なれども聖人の心に通へり。

 

「吉田と申す馬乗り」

【本文】

吉田と申す馬乗りの申し侍りしは、「馬ごとにこはきものなり。人の力、争ふべからずと知るべし。乗るべき馬をば、まづよく見て、強きところ、弱きところを知るべし。次に、轡・鞍の具に、あやふきことやあると見て、心にかかることあらば、その馬を馳すべからず。この用意を忘れざるを、馬乗りとは申すなり。これ秘蔵のことなり。」と申しき。

【現代語訳】

吉田と申す馬乗りが申しましたことには、「どの馬もみな手ごわいものである。人の力は、(馬と)張り合うことができないと知らなければならない。乗ることになっている馬を、まずよく見て、その馬の強いところ、弱いところを知らねばならない。次に、轡・鞍の器具に危なっかしいところはないかと調べて、気にかかることがあるなら、その馬を走らせてはならない。この心遣いを忘れないのを、馬乗りとは申すのだ。これは乗馬についての秘訣である。」と申した。

(第百八十六段)

【品詞分解】

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【予想問題】

1吉田と申す乗馬の名人が、乗馬の心得として第一にあげていることは何か。そのことを説明した次の文の空欄に、適当な言葉を補え。

 ・乗り手の[      ]の限界を知ることである。

2乗馬の名人の第二の心得は何か。そのことを説明した次の文の空欄に、適当な言葉を補え。

 ・馬の[      ]をよく認識することである。

3乗馬の名人の心得として、何に気がかりな点があったら馬に乗らないと述べているか。

 〔                         〕

4「まづよく見て」〔3〕とあり、「あやふきことやあると見て」〔4〕とあるが、「見」るの意味に違いがある。そのことを説明した次の文の空欄に、適当な言葉を補え。

 ・前者は[      ]することであり、後者は[     ]てみることである。

5この文章によると、名人・達人とよばれる人の()(けつ)にはどのような性質・特徴があるか。そのことについて説明した次の文の空欄に、適当な言葉を補え。

 ・一見[      ]に見える内容で、かえって実行困難であることが、秘訣たるゆえんとなっている。

●解答●

技量(技術)

能力(性質)

轡や鞍

観察・調べ

平凡

「よろづのことは頼むべからず」

【本文】

よろづのことは頼むべからず。おろかなる人は、深くものを頼むゆゑに、恨み、怒ることあり。

 勢ひありとて頼むべからず。こはき者まづ滅ぶ。財多しとて頼むべからず。時の間に失ひやすし。才ありとて頼むべからず。孔子も時に合はず。徳ありとて頼むべからず。顔回も不幸なりき。君の寵をも頼むべからず。誅を受くること速やかなり。奴従へりとて頼むべからず。背き、走ることあり。人の志をも頼むべからず。必ず変ず。約をも頼むべからず。信あること少なし。

 身をも人をも頼まざれば、是なるときは喜び、非なるときは恨みず。左右広ければさはらず。前後遠ければ塞がらず。せばきときはひしげ砕く。心を用ゐること少しきにしてきびしきときは、ものに逆ひ、争ひて破る。ゆるくしてやはらかなるときは、一毛も損ぜず。

 人は天地の霊なり。天地は限るところなし。人の性なんぞことならん。寛大にしてきはまらざるときは、喜怒これにさはらずして、もののためにわづらはず。


【現代語訳】

すべてのことは頼みにできない。おろかな人は、深くものを頼みにするために、(期待を裏切られて)恨んだり、怒ったりすることがある。

 権勢があるからといって頼みにできない。強い者は真っ先に滅ぶ。財産が多いからといって頼みにできない。ほんのわずかの間になくしやすい。学才があるからといって頼みにできない。(あの著名な)孔子も時勢に合わ(ず世に用いられ)なかった。徳があるからといって頼みにできない。顔回も不幸であった。主君の寵愛をも頼みにはできない。(主君の怒りに触れると)たちまちに罪を着せられて殺されることになる。召し使いが言うことをよく聞くからといって頼みにはできない。(召し使いは主人に)背いて、逃げ去ることがある。人の厚意をも頼みにできない。(人の気持ちは)必ず変わる。人との約束をも頼みにできない。約束を守る信があることはまれだ(からである)。

 自分をも他人をも頼みにしなければ、うまくことが運んだときは喜び、うまくことが運ばなかったときは(期待していたわけではないから)恨まない(ですむ)。左右に広く余裕を取っておけば障害物に妨げられることがない。前後に距離を保っておけば動きがとれなくなったりすることがない。(反対に、左右・前後に)余裕や距離を保っておかなかったときは(まわりから)押しつぶされ砕けてしまう。心を配ることが(こせこせして)少なくて厳格すぎるときは、物事と衝突を起こし、争って(自分が)傷つく(ことになる)。(反対に、心を配ることが)ゆったりとして柔軟なときは、毛筋一本も損なうことがない。

人は天地の間に存在する最も霊妙なものである。天地は無限の広さを持っている。人間の本性も(この天地の広さと)どうして異なるところがあろうか。(人の心が)寛容かつ広大で際限もないときは、喜びも怒りも心の障害とならないで、まわりのもののために煩わされることがない。

(第二百十一段)


【品詞分解】

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【予想問題】

1「深くものを頼むゆゑに、恨み、怒ることあり。」〔1〕とは、深くものを頼んだ結果、事がうまく運ばなかったときは、恨み、怒ることになる、ということである。第三段落では、「事がうまく運ばなかったとき」をどのように言い表しているか。

 〔                         〕

2「孔子も時に合はず。」〔5〕について、『(こう)()()()』に「遇と不遇とは時なり。」とある。その意味を説明した次の文の空欄に、適当な言葉を補え。

 ・聖人の孔子でさえも時勢に合わず[      ]であった。

3「君の寵をも頼むべからず。」〔6〕とあるが、なぜ「君の寵」は頼みにできないのか。そのことを説明した次の文の空欄に、適当な言葉を補え。

 ・ひとたび君の[      ]にあえば、たちまちに[   ]を負って殺されるから。

4「人の性なんぞことならん。」〔15〕とあるが、「人の性」が何と異ならないというのか。

 〔                         〕

5「寛大にしてきはまらざるときは、喜怒これにさはらずして」〔16〕とあるが、「これ」とは何をさしているか。

 〔                         〕

6冒頭で、「よろづのことは頼むべからず。」〔1〕と述べているが、その頼むべからざる例を第二段落で八つ列挙している。次の空欄を補って、八つの例を整理せよ。

 ・勢ひ・[    ]・才・[    ]・君の寵・奴・人の志・約、の八つである。

7すべてのことが頼みにできない現実に対して、筆者兼好は「ゆったりとして、柔軟性のある」態度で対処するのがよいと第三段落で述べている。「ゆったりとして、柔軟性のある」態度をどのように言い表しているか。

 〔                         〕

●解答●

非なるとき

不遇

怒り・罪

天地

人の性

財・徳

ゆるくしてやはらかなる

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