漢文を勉強するならば『論語』を学べ。と言われるくらい重要な孔子の『論語』です。論語を学ぶことで漢文の基礎や漢文の役割、時代背景までも学べます。
〇『論語』とは?
『論語』は、孔子とその高弟の言行を、孔子の死後に弟子が記録した書物である。儒教の経典である経書の一つで、朱子学における「四書」の一つに数えられる。 その内容の簡潔さから儒教入門書として広く普及し、中国の歴史を通じて最もよく読まれた本の一つである。
Wikipediaより

古くから日本にも伝わってきて、その内容から「生き方・考え方の指標」として親しまれてきました。そんな孔子の『論語』は、とても幅広く入試で扱われます。ぜひ学んでおきたいところですね。
さっそく見ていきましょう!
【本文】(白文)

①子曰、「吾十有五而志于学。三十而立。四十而不惑。五十而知天命。六十而耳順。七十而従心所欲不踰矩。」(『論語』為政)
②廏焚。子退朝曰、「傷人乎。」不問馬。(『論語』郷党)
③子曰、「飯疏食、飲水、曲肱而枕之。楽亦在其中矣。不義而富且貴、於我如浮雲。」(『論語』述而)
④葉公語孔子曰、「吾党有直躬者。其父攘羊、而子証之。」孔子曰、「吾党之直者、異於是。父為子隠、子為父隠。直在其中矣。」(『論語』子路)
⑤子曰、「巧言令色、鮮矣仁。」(『論語』学而)
⑥子曰、「学而時習之、不亦説乎。有朋自遠方来、不亦楽乎。人不知而不慍、不亦君子乎。」(『論語』学而)
⑦子曰、「学而不思、則罔。思而不学、則殆。」(『論語』為政)
⑧子曰、「三人行、必有我師焉。択其善者而従之、其不善者而改之。」(『論語』述而)
⑨子貢問曰、「有一言而可以終身行之者乎。」子曰、「其恕乎。己所不欲、勿施於人。」(『論語』衛霊公)
⑩子貢問政。子曰、「足食、足兵、民信之矣。」子貢曰、「必不得已而去、於斯三者何先。」曰、「去兵。」子貢曰、「必不得已而去、於斯二者何先。」曰、「去食。自古皆有死。民無信不立。」(『論語』顔淵)
⑪子曰、「由、誨女知之乎。知之為知之、不知為不知。是知也。」(『論語』為政)
⑫子謂顔淵曰、「用之則行、舎之則蔵。唯我与爾有是夫。」子路曰、「子行三軍、則誰与。」子曰、「暴虎馮河、死而無悔者、吾不与也。必也臨事而懼、好謀而成者也。」(『論語』述而)
【書き下し文】と【訳】

①子曰はく、「吾十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑はず。五十にして天命を知る。六十にして耳順ふ。七十にして心の欲する所に従ひて矩を踰えず。」と。
①先生が言うことには、「私は十五の年に学問の世界に入っていく志を立てた。三十の年に基礎ができあがり自らの立場を確立した。四十の年に世事に迷うことがなくなった。五十の年に天から与えられた使命を理解した。六十の年に何ごとも素直に聞くことができるようになった。七十の年に自分の心の欲するものに従って人の守るべき道を踏み外さなくなった。」と。
②廏焚けたり。子朝より退きて曰はく、「人を傷へるか。」と。馬を問はず。
②(先生の家が火事になり)馬小屋が焼けた。先生が朝廷から退出して言うことには、「けがをした者はいないか。」と。馬については尋ねなかった。
③子曰はく、「疏食を飯らひ、水を飲み、肱を曲げて之を枕とす。楽しみ亦其の中に在り。不義にして富み且つ貴きは、我に於いて浮雲のごとし。」と。
③先生が言うことには、「粗末な食物を食べ、水を飲み、ひじを曲げてこれを枕とする。楽しみはそのような生活の中にもまたあるものだ。人の守るべき道に外れることをして富み、その上高い地位を得ることは、私にとって空に浮かぶ雲のような(すぐに消えてなくなるはかない)ものだ。」と。
④葉公孔子に語げて曰はく、「吾が党に直躬なる者有り。其の父羊を攘みて、子之を証せり。」と。孔子曰はく、「吾が党の直き者は、是に異なり。父は子の為に隠し、子は父の為に隠す。直きこと其の中に在り。」と。
④葉公が先生に告げて言うことには、「私の村里には正直者の躬という人がいる。その父親が迷い込んだ羊を自分のものにしたとき、子(である躬)はこれを証言して明らかにした。」と。先生が言うことには、「私の村里の正直者は、それとは異なります。父親は子の為に秘密にし、子は父の為に秘密にします。正直であるということはその中にあるのです。」と。
⑤子曰はく、「巧言令色、鮮なし仁。」と。
⑤先生が言うことには、「口先が巧みな人やこびを含む顔つきをする人には、仁の徳はほとんど備わっていないものだ。」と。
⑥子曰はく、「学びて時に之を習ふ、亦説ばしからずや。朋の遠方より来たる有り、亦楽しからずや。人知らずして慍らず、亦君子ならずや。」と。
⑥先生が言うことには、「学んでほどよい頃にこれ(学んだこと)を復習する、なんとうれしいではないか。遠方から訪ねてくる友人がいる、なんと楽しいではないか。人が自分を理解してくれなくとも不平不満を抱かない、なんとすぐれた人物ではないか。」と。
⑦子曰はく、「学びて思はざれば、則ち罔し。思ひて学ばざれば、則ち殆ふし。」と。
⑦先生が言うことには、「書を読み学ぶばかりで思索しなければ、物事の道理がよくわからない。思索するばかりで学ばなければ、その時には独断に陥って危険である。」と。
⑧子曰はく、「三人行へば、必ず我が師有り。其の善なる者を択びて之に従ひ、其の善ならざる者にして之を改む。」と。
⑧先生が言うことには、「三人で行動すれば、必ず(その中に)自分の手本となる者がいるものだ。そのよい者を選んでこれ(その人)に従い、そのよくない者を見てこれ(我が身)を改める。」と。
⑨子貢問ひて曰はく、「一言にして以て終身之を行ふべき者有りや。」と。子曰はく、「其れ恕か。己の欲せざる所、人に施すこと勿かれ。」と。
⑨子貢が尋ねて言うことには、「一文字の言葉で一生実行してもよいものはありますか。」と。先生が言うことには、「恕だろうなあ。自分が望まないことを人に対して行ってはいけない。」と。
⑩子貢政を問ふ。子曰はく、「食を足らしめ、兵を足らしめ、民之を信にす。」と。子貢曰はく、「必ず已むを得ずして去らば、斯の三者に於いて何をか先にせん。」と。曰はく、「兵を去らん。」と。子貢曰はく、「必ず已むを得ずして去らば、斯の二者に於いて何をか先にせん。」と。曰はく、「食を去らん。古より皆死有り。民信無くんば立たず。」と。
⑩子貢が政治について尋ねた。先生が言うことには、「食糧を十分にさせ、兵力を十分にさせて、人民に信義の心を持つようにさせることだ。」と。子貢が言うことには、「もしどうしてもやむを得ず一つを捨て去るならば、この三者のうちで何を先にしますか。」と。(先生が)言うことには、「兵力を捨て去ろう。」と。子貢が言うことには、「もしどうしてもやむを得ず一つを捨て去るならば、この両者のうちでどちらを先にしますか。」と。(先生が)言うことには、「食糧を捨て去ろう。昔から誰にもみんな死というものがある。人民は信義の心がなければ、人として存在できないのだ。」と。
⑪子曰はく、「由、女に之を知るを誨へんか。之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らずと為す。是れ知るなり。」と。
⑪先生が言うことには、「由よ、お前に知るということを教えようか。知っていることを知っているとし、知っていないことを知っていないとする。これが知るということだ。」と。
⑫子顔淵に謂ひて曰はく、「之を用ゐれば則ち行ひ、之を舎つれば則ち蔵る。唯だ我と爾と是れ有るかな。」と。子路曰はく、「子三軍を行らば、則ち誰と与にせん。」と。子曰はく、「暴虎馮河、死して悔ゆる無き者は、吾与にせざるなり。必ずや事に臨みて懼れ、謀を好みて成さん者なり。」と。
⑫先生が顔淵に向かって言うことには、「登用されたならばその時には世に出て行動し、見捨てられ用いられないならばその時には出仕しないで身をひそめる。ただ私とお前とだけがそれを理解しているなあ。」と。子路が言うことには、「もし先生が大国の軍隊を指揮するならば、誰と共に行いますか。」と。先生が言うことには、「虎に素手で立ち向かったり大河を歩いて渡るような無謀な行為をして、死んでも後悔せぬ者は、私は共には行動しない。(私が共に行動するのは)必ずや事に臨んで慎重に振る舞い、計画を立てることを好んで事を成す者である。」と。
【現代語訳】(全文)

①先生が言うことには、「私は十五の年に学問の世界に入っていく志を立てた。三十の年に基礎ができあがり自らの立場を確立した。四十の年に世事に迷うことがなくなった。五十の年に天から与えられた使命を理解した。六十の年に何ごとも素直に聞くことができるようになった。七十の年に自分の心の欲するものに従って人の守るべき道を踏み外さなくなった。」と。
②(先生の家が火事になり)馬小屋が焼けた。先生が朝廷から退出して言うことには、「けがをした者はいないか。」と。馬については尋ねなかった。
③先生が言うことには、「粗末な食物を食べ、水を飲み、ひじを曲げてこれを枕とする。楽しみはそのような生活の中にもまたあるものだ。人の守るべき道に外れることをして富み、その上高い地位を得ることは、私にとって空に浮かぶ雲のような(すぐに消えてなくなるはかない)ものだ。」と。
④葉公が先生に告げて言うことには、「私の村里には正直者の躬という人がいる。その父親が迷い込んだ羊を自分のものにしたとき、子(である躬)はこれを証言して明らかにした。」と。先生が言うことには、「私の村里の正直者は、それとは異なります。父親は子の為に秘密にし、子は父の為に秘密にします。正直であるということはその中にあるのです。」と。
⑤先生が言うことには、「口先が巧みな人やこびを含む顔つきをする人には、仁の徳はほとんど備わっていないものだ。」と。
⑥先生が言うことには、「学んでほどよい頃にこれ(学んだこと)を復習する、なんとうれしいではないか。遠方から訪ねてくる友人がいる、なんと楽しいではないか。人が自分を理解してくれなくとも不平不満を抱かない、なんとすぐれた人物ではないか。」と。
⑦先生が言うことには、「書を読み学ぶばかりで思索しなければ、物事の道理がよくわからない。思索するばかりで学ばなければ、その時には独断に陥って危険である。」と。
⑧先生が言うことには、「三人で行動すれば、必ず(その中に)自分の手本となる者がいるものだ。そのよい者を選んでこれ(その人)に従い、そのよくない者を見てこれ(我が身)を改める。」と。
⑨子貢が尋ねて言うことには、「一文字の言葉で一生実行してもよいものはありますか。」と。先生が言うことには、「恕だろうなあ。自分が望まないことを人に対して行ってはいけない。」と。
⑩子貢が政治について尋ねた。先生が言うことには、「食糧を十分にさせ、兵力を十分にさせて、人民に信義の心を持つようにさせることだ。」と。子貢が言うことには、「もしどうしてもやむを得ず一つを捨て去るならば、この三者のうちで何を先にしますか。」と。(先生が)言うことには、「兵力を捨て去ろう。」と。子貢が言うことには、「もしどうしてもやむを得ず一つを捨て去るならば、この両者のうちでどちらを先にしますか。」と。(先生が)言うことには、「食糧を捨て去ろう。昔から誰にもみんな死というものがある。人民は信義の心がなければ、人として存在できないのだ。」と。
⑪先生が言うことには、「由よ、お前に知るということを教えようか。知っていることを知っているとし、知っていないことを知っていないとする。これが知るということだ。」と。
⑫先生が顔淵に向かって言うことには、「登用されたならばその時には世に出て行動し、見捨てられ用いられないならばその時には出仕しないで身をひそめる。ただ私とお前とだけがそれを理解しているなあ。」と。子路が言うことには、「もし先生が大国の軍隊を指揮するならば、誰と共に行いますか。」と。先生が言うことには、「虎に素手で立ち向かったり大河を歩いて渡るような無謀な行為をして、死んでも後悔せぬ者は、私は共には行動しない。(私が共に行動するのは)必ずや事に臨んで慎重に振る舞い、計画を立てることを好んで事を成す者である。」と。
【重要語句】
夫 | 爾 | 女 | 可 | 如 | 且 | 所 | 于 | 語 句 |
①をつと(夫) ②かノ(あの) ③そレ(そもそも) ④かな(~だなあ)[詠嘆] ▼ここでは④の意。 | ①なんぢ(あなた)[二人称] ②のみ(~だけだ)[限定] ▼ここでは①の意。 | ①なんぢ(あなた)[二人称] ②をんな・むすめ(女性・女の子) ▼ここでは①の意。 | ①かナリ(よい) ②べシ[可能・許可・当然] ▼ここでは②の意。 | ①ゆク(行く) ②しク(及ぶ) ③ごとシ(~のようだ)[比況] ④もシ(もし~ならば)[仮定] ▼ここでは③の意。 | ①かツ(その上・一方で) ②まさニ~す(~しようとする・~するつもりだ)[再読文字] ▼ここでは①の意。 | ①ところ(場所) ②ところ[行為の対象になる人・物・事を表す] ③る・らル(~される)[受身] ▼ここでは②の意。 | ①おイテ(~において) ②[置き字/対象・場所] ▼ここでは②の意。 | 意 味 |
テスト対策練習問題

問「朝」の意味を答えよ。
答 朝廷
問 孔子が馬のことを尋ねなかった理由として、どのようなことが考えられるか。
答 (例)家畜としての馬よりも、人命の安全を第一に思いやったから。
【子曰、「飯疏食…】
問 「飯疏食飲水、曲肱而枕之」とは、どのような暮らしぶりか。
答 貧しくても誠実な暮らしぶり。
問 「楽亦在其中矣」の「亦」と同じ読みで用いられる字として適当でないものを選べ。
ア 復 イ 還 ウ 又 エ 焉
答 エ
【葉公語孔子曰…】
問 「子証之」の「証」とは、何をすることか。「証」を用いた二字の熟語で答えよ。
答 証言
問 「其中」とは、どのようなことを指しているか。
答 父と息子が互いに罪をかばって隠してやる行動のこと。
問 葉公と孔子はどのような行動を「直」であると考えているか。
答 葉公は父の犯罪であっても正直に申告する行動を「直」と考え、孔子は父を思いやってかばう行動を「直」と考えている。
【子曰、「巧言令色…】
問 「巧言」や「令色」にはどうして「仁」が少ないのか考えよ。
答 言葉だけ巧みだったり、顔つきにこびが含まれていたりするということは、真心から相手に接していることにはならないから。
問 本文に基づく四字熟語「巧言令色」と最も意味が近いものを選べ。
ア 傍若無人 イ 阿諛追従
ウ 剛毅木訥 エ 慇懃無礼
答 イ
【子曰、「学而時習之…】
問 「学而時習之」の「習」について、ここでの意味を「習」を用いた二字の熟語で答えよ。
答 復習
問 「人不知」とあるが、何を「不知」なのか。
答 自分の本当の実力や価値、学問の深さなど。
【子曰、「学而不思…】
問 「則殆」の「殆」について、この字を用いた熟語として、同じく「あやうい」という意味を表す字と重ねた「〔 〕」がある。空欄に当てはまる二字熟語を答えよ。
答 危殆
問 「学」と「思」の違いは、どのような点か。
答 「学」は書物などを通じて人の教えを学ぶこと。「思」は自分自身で考えること。
【子曰、「三人行…】
問 「三人行」とあるが、「三人」の内訳を説明せよ。
答 (例)一人は自分。一人は自分よりよい者。一人は自分よりよくない者。
問 「其不善者而改之」と最も近い内容を表すことわざを選べ。
ア 人のふり見て我がふりなおせ
イ 木を見て森を見ず
ウ ミイラ取りがミイラになる
エ 昨日は人の身、明日は我が身
答 ア
問 孔子にとって「師」とは、どのような存在なのか。
答 自分の行いを正す指針となる存在。
【子貢問曰…】
問 「其恕乎」の「其~乎」の用法を選べ。
ア 反語 イ 推測 ウ 断定
答 イ
【子貢問政…】
問 「斯三者」とは何を指しているか。
答 「食」「兵」「信」。
問 「曰、『去兵。』」は誰の発言か。
答 孔子(子)
問 「自古皆有死」の「自」と同じ読みで用いられることのある字を、本文1から抜き出せ。
答 従
問 孔子が政治において考える優先順位を述べよ。
答 ①信。②食。③兵。
問 なぜ「食」より「信」を重視するのか。
答 「食」を取り去って人が死んだとしても、死は必ずやってくるものだが、「信」がないと人としての存在価値自体がなくなると考えているから。
【子曰、「由…】
問 「誨女知之乎」の「女」について、同じ意味を表す字として、「女」を旁としてもつ「〔 〕」がある。空欄に当てはまる漢字を答えよ。
答 汝
問 孔子の言う「知」とは、どのようなものか。
答 知っていることと知らないことの区別をはっきりさせること。
【子謂顔淵曰…】
問 「用之則行」の「用」とは、何をすることか。「用」を用いた二字の熟語で答えよ。
答 登用
問 「是」とは何を指すか。
答 登用されれば働き、されなければ身をひそめる生き方。
問 子路は、どのような気持ちで孔子に質問したと考えられるか。
答 顔淵のように「時宜を得た振る舞いができる」と評価されなかったのを悔しく思い、大軍の指揮ならば「おまえだ」と言ってもらえることを期待する気持ち。
問 本文に基づく四字熟語「暴虎馮河」と最も意味が近いものを選べ。
ア 自暴自棄 イ 虎視眈眈
ウ 直情径行 エ 思慮分別
答 ウ
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