漢文『蛇足』の書き下し文と現代語訳ー予想問題付ー

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古典ノート
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【蛇足】 解説

《昔、中国の楚 (そ) の国で、蛇の絵をはやく描く競争をした時、最初に描き上げた者がつい足まで描いてしまったために負けたという「戦国策」斉策上の故事から》

付け加える必要のないもの。無用の長物。

上記の意味で現代でも用いられている言葉です。そのもとになったお話が「戦国策」の「蛇足」です。書き下し文と現代語訳は、蛇足の話が使われた前後の場面まで載せておきました。

授業の予習や受験勉強などで活用してください。不明な点は、ぜひコメントよりご質問をお願いいたします。

【蛇足】原文(絵を描き上げる場面のみ)

   楚 有 祠 者 賜 其 舎 人 巵 酒 舎 人 相 謂 曰

 数 人 飲 之 不 足 一 人 飲 之 有 余 請 画 地 為

 蛇 先 成 者 飲 酒 一 人 蛇 先 成 引 酒 且 飲 之

 乃 左 手 持 巵 右 手 画 蛇 曰 吾 能 為 之 足 未

 成 一 人 之 蛇 成 奪 其 巵 曰 蛇 固 無 足 子 安

 能 為 之 足 遂 飲 其 酒 為 蛇 足 者 終 亡 其 酒

  

【蛇足】書き下し文(前後の場面まで)

 昭陽 楚の為に魏を伐ち、軍を覆し将を殺して八城を得、兵を移して斉を攻む。陳軫 斉王の為に使ひし、昭陽に見え、再拝して戦勝を賀し、起ちて問ふ、「楚の法、軍を覆し将を殺さば、其の官爵は何ぞや。」と。昭陽曰はく、「官は上柱国と為り、爵は上執珪と為らん。」と。陳軫曰はく、「異に此れより貴き者は、何ぞや。」と。曰はく、「唯だ令尹あるのみ。」と。陳軫曰はく、「令尹は貴し。王 両令尹を置くに非ざるなり。臣 窃かに公の為に譬へん、可ならんか。

楚に祠者有り、其の舎人に卮酒を賜ふ。舎人 相謂ひて曰はく、『数人 之を飲まば足らず、一人 之を飲まば余り有り。請ふ地に画きて蛇を為り、先づ成る者酒を飲まん。』と。一人の蛇 先づ成る。酒を引きて且に飲まんとす。乃ち左手もて卮を持ち、右手もて蛇を画きて曰はく、『吾 能く之が足を為らん。』と。未だ成らざるに、一人の蛇 成る。其の卮を奪ひて曰はく、『蛇固より足無し。子 安くんぞ能く之が足を為らん。』と。遂に其の酒を飲む。蛇の足を為る者、終に其の酒を亡ふ。

今 君 楚に相たりて魏を攻め、軍を破り将を殺して八城を得、兵を弱めず斉を攻めんと欲す。斉 公を畏るること甚だし。公 是れを以つて名と為すに亦足れり。官の上に重ふべきに非ざるなり。戦ひて勝たざるは無くして止まるを知らざる者は、身 且に死せんとす。爵 且に後に帰せんとす。猶ほ蛇足を為すがごときなり。」と。昭陽 以つて然りと為し、軍を解きて去る。

【蛇足】現代語訳(前後の場面まで)

 (楚の将軍の)昭陽は、楚のために魏を討ち、(魏の)軍を破り、(魏の)将を殺して(魏の)八城を奪って、兵を転じて斉に攻め寄せた。陳軫は斉王のために使者として昭陽に会見し、再拝して戦勝を祝い、立ち上がって尋ねて、「楚の国の法では、敵軍を破り、敵将を殺した場合は、(その功に対して与えられる)官爵は何でしょうか。」と言った。昭陽は、「官は上柱国であり、爵は上執珪となるだろう。」と答えた。陳軫は、「そのほかに、これより貴いものは何でしょうか。」と尋ねた。(昭陽は)「ただ令尹があるだけだ。」と答えた。陳軫は、「令尹(の位)は貴いものです。(しかし)楚王は二人の令尹をお置きになることはありません。私は、あなたさまのためにそっとたとえ話をいたしましょう、よろしいでしょうか。

 楚の国に祭祀を主宰する者がおり、その召し使いたちに大杯についだ酒をふるまった。召し使いたちは互いに、『数人でこの酒を飲めば足りないが、一人で飲めば十分に余りがある。地面に蛇を描いて、最初に描き上げた者がこの酒を飲もう。』と話し合った。一人の者が最初に蛇を描き上げた。(そして)酒を手もとに引き寄せて飲もうとした。そこで左手で大杯を持ち、右手で蛇に描き加えながら、『私はこれに足を描くことができるぞ。』と言った。まだ(その蛇の足が)出来上がらないうちに、別の一人の蛇が描き上がった。(その男は、先に蛇を描き上げた男の持つ)大杯を奪い取って、『蛇にはもともと足はない。あなたはどうして蛇の足を描けるのか、いや、描けるはずがない。』と言った。そのままその男が酒を飲んでしまった。蛇の足を描いた者は、結局その酒を飲み損なってしまった。

さて今あなたさまは、楚に大臣となって魏の国を攻撃なさり、魏の軍を打ち破り、魏の将軍を殺して、魏の八城を得、(その上)兵力を弱めることなく、斉を攻めようとなさっておられます。斉はあなたさまを大変に恐れています。あなたさまは、これだけでも名誉となさるに十分であります。(今までの功績で受けられる)官位の上に、さらに加えられる官位があるわけではありません。戦っても負けることはなく、(ちょうどよい潮時に)とどまることを知らない者は、その身は滅びようとしております。(そしてあなたさまに当然くるはずの)爵位は後任の人のものになろうとしております。(これは)ちょうど蛇の足を描くようなものであります。」と言った。昭陽は、そのとおりであると思い、(斉を攻撃する)軍を解いて引き揚げた。

【蛇足】予想問題

問「先成」の「成」は、どういう意味か。

答できあがる。完成する。

問「吾能為之足」は、どのような気持ちから発せられた言葉か。

答他の者より先に描くことができて誇らしげな気持ち。

問「未成」とは、何がまだできあがらないというのか。

答蛇の足。

問「奪其卮」のは、誰か。

答次に蛇を描きあげた人。

問「子」は、誰をさすか。

答最初に蛇を描きあげた者。

問「遂」と「終」の意味を答えよ。

答「遂」は、「そのまま」「かくて」。「終」は「とうとう」「結局」。

終わりに

いかがでしたか?

蛇足の意味とどのように生まれたのかが分かりましたか?現代語訳が少しわかりにくいかもしれませんが、参考書や問題集の現代語訳もこのように書かれることが多いので、ぜひ慣れておいてください。

この記事が皆さんの勉強の役に立てば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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