漢文『画竜点睛』の意味・書き下し文と現代語訳【重要語句やテストの予想問題】

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古典ノート

 四字熟語「画竜点睛」とは「事を完成するために最後に加える大切な仕上げ。物事の最も重要な部分のたとえ。文章や話などで肝心なところに手を入れて、全体をいっそう引き立てるたとえ。」のことです。

 一般的には「画竜点睛を欠く」という使われ方をして、「この場合は最後の仕上げが不十分で、肝心なところが欠けているため精彩がないこと。」の意味になります。「竜りょうを画えがいて睛ひとみを点ず」と訓読することができます。

 今回は「画竜点睛」の意味のもとになったお話、漢文『画竜点睛』の書き下し文や現代語訳、本文の重要語句やテストの予想問題を解説します授業やテストの予習・復習、大学入試対策にお役立てください。

 

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本文

 

書き下し文と現代語訳

➀張僧繇は、呉中の人なり。武帝仏寺を崇飾するに、多く僧繇に命じて之に画かしむ。
➀張僧繇(そうえう)は、呉中の人である。武帝は仏教の寺を立派に飾る際に、数多く僧繇に命令して(寺に)絵を描かせた。

②金陵の安楽寺の四白竜は、眼睛を点ぜず。
②金陵の安楽寺の四匹の白い竜の絵は、ひとみを描き入れていない。

③毎に云ふ、「睛を点ぜば即ち飛び去らん。」と。
③(僧繇が)いつも言うことには、「もしひとみを描き入れたならば、すぐに飛び去ってしまうだろう。」と。

 

④人以て妄誕と為し、固く請ひて之を点ぜしむ。
④人々はでたらめだと思って、かたくなに(僧繇に)頼んでひとみを描き入れさせた。

⑤須臾にして雷電壁を破り、両竜雲に乗り、騰去して天に上る。
⑤すぐさま雷電が壁を突き破り、二匹の竜が雲に乗り、勢いよく飛び去って天に昇っていった。

⑥二竜の未だ眼を点ぜざる者は、見に在り。
⑥二匹の竜の絵でまだひとみを描き入れていないものは、現存している。

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本文(白文)

➀張僧繇、呉中人也。

②武帝崇飾仏寺、多命僧繇画之。

③金陵安楽寺四白竜、不点眼睛。

④毎云、「点睛即飛去。」人以為妄誕、固請点之。

⑤須臾雷電破壁、両竜乗雲、騰去上天。

⑥二竜未点眼者、見在。
                                    (『歴代名画記』)

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重要語句の意味

以為語 句
①いまダ~ず(まだ~ない・~ない)[再読文字]①おもヘラク~ト(~だと思う) ②もつテ~トなス(~だと思う・~にする) ▼ここでは②の意。①すなはチ(すぐに) ②すなはチ(その時には) ③すなはチ(とりもなおさず・つまり) ▼ここでは①の意。①つねニ(いつも) ②ごとニ(~のたびに) ▼ここでは①の意。意 味

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参考文献

 『画竜点睛』に登場する僧繇に関する文章です。絵描きとして優れた才能をもっていた彼の逸話が掲載されている『歴代名画記』の2つの文章です。
 素晴らしい絵を描いた彼には、仏教的な力が宿っていることが分かりますね。

 

『歴代名画記』巻七①

書き下し文

➀時に諸王外に在り。武帝之を思ひ、僧繇を遣はして伝に乗じて貌を写さしむ。
②之に対すれば面ゆるがごときなり。
③江陵の天皇寺は、明帝置く。内に柏堂有り。僧繇盧舎那仏像及び仲尼の十哲を画く。
④帝怪しみて問ふ、「釈門の内に如何ぞ孔聖を画く。」と。
⑤僧繇曰はく、「後当に此に頼るべきのみ。」と。
⑥後周仏法を滅し、天下の寺塔を焚くに及び、独り此の殿に宣尼像有るを以て乃ち毀拆せしめず。

 

現代語訳

➀当時、王たち(武帝の子たち)は皆、地方を治めていた。武帝は彼らを思い、僧繇を馬車で派遣して(子たちの)肖像を描かせた。
②肖像画に向き合うと、実際に(子たちと)対面しているかのようであった。
③江陵の天皇寺は、(南朝斉の)明帝が創建したものである。その中に柏堂がある。僧繇は(柏堂に)盧舎那仏と孔門十哲の絵を描いた。
④武帝が不思議に思って尋ねることには、「寺院の中に、なぜ孔子の絵を描いたのか。」と。
⑤僧繇が言うことには、「後にきっとこの絵に頼ることがあるはずです。」と。
⑥(やがて)後周(北周)が仏教を弾圧し、天下の寺塔を焼いた際、ただこの仏殿だけは孔子の肖像があったことにより、(北周は寺院を)破壊させなかった。

『歴代名画記』巻七②

書き下し文

➀又、天竺の二胡僧を画く。
②侯景の乱に因り、散坼して二と為る。後一僧は唐の右常侍陸堅の宝とする所と為る。
③堅疾篤し。一胡僧を夢む。
④告げて云ふ、「我に同侶の離坼すること多時なる有り。今は洛陽の李家に在り。若し求めて之を合せば、当に法力を以て君を助くべし。」と。
⑤陸銭帛を以て果たして其の処に於いて購得す。
⑥疾乃ち愈ゆ。

現代語訳

➀(僧繇は)また、インドの二人の僧侶を描いた。
②侯景の乱(五四八~五五二)の混乱により、(絵は)裂かれて二つになった。その後、片方の僧侶の絵は唐の右常侍・陸堅が宝として保有することになった。
③陸堅は病が篤く、(病床で)一人の僧侶を夢に見た。
④(僧侶が)告げて言うことには、「私には、引き裂かれて長い間離ればなれになっている連れ合いがいる。(その彼は)今は洛陽の李氏の家にいる。もし探し求めて(私と)一つにしてもらえれば、(私は)きっと法力によってあなたを助けて差し上げよう。」と。
⑤陸堅は金銭・布帛によって、実際に(夢で僧侶が告げた)その場所で(もう片方の絵を)買い取ることができた。
⑥病気は、すると癒えた。

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テスト予想問題(入試対策)

補充 「武帝崇飾仏寺」を書き下し文に改めよ。知

答 武帝仏寺を崇飾するに

補充 「之」の指し示す内容としてもっとも適当なものを、次から選べ。思

ア 張僧繇  イ 仏寺  ウ 武帝  エ 白竜

答 イ

補充 「不点」とあるが、なぜか。十五字以内で説明せよ。思

答 竜が飛び去ってしまうから。

 

発問 「即」のここでの意味は何か。思

答 すぐに。

補充 「点之」について、以下の問いに答えよ。思

①「之」の指し示す内容を抜き出せ。

②誰が誰に行わせた動作かわかるように補って、口語訳せよ。

③この行為をした理由として最も適当なものを、次から選べ。

ア 竜について、以前から張僧繇が言っていたことが嘘だということを立証させたかったから。

イ 張僧繇は以前からでたらめを言っており、竜が飛ぶというのも同じだと考えていたから。

ウ 竜について張僧繇が言っていたことはでたらめだと、多くの人が軽く考えていたから。

エ 竜が空を舞う様子を見たいと考えた人々が、張僧繇に絵を完成させることを頼んだから。

答 ①睛 ②人々は、張僧繇に竜の瞳を描かせた。 ③ウ

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発問 「二竜未点眼者、見在」を書き下し文にせよ。知

答 二竜の未だ眼を点ぜざる者は、見に在り。

発問 「見在」とは何が、どこにあるということか。思

答 ひとみを描いていない二匹の竜はまだ金陵の安楽寺にある、ということ。

補充 「見在」と対照的な様子を述べた表現を、二字で抜き出せ。思

答 上天

 

補充 本文における竜の状況について次のようにまとめた。〔 ① 〕~〔 ③ 〕にあてはまる数を漢数字で答えよ。思

もともと張僧繇は〔 ① 〕匹の竜を描いていたが、そのうち〔 ② 〕匹は空へ上がり、現在では〔 ③ 〕匹が残っている。

答 ①四 ②二 ③二

発問 「画竜点睛」とは現在どのような意味で使われているか。思

答 「ものごとの最後の仕上げ」「要所に一筆かき入れることで、全体が立派に引き立つこと」などの意味で用いられる。また「画竜点睛を欠く」の形で「全体はよくできているのに、大事な一点が不十分なこと」の意味で用いることも多い。

1 張僧繇はどのような画家として描かれているか。本文からわかることをあげてみよう。思

答 (例)
・武帝の信任を得ている。
・仏教絵画にすぐれる。
・描いたものが本物に見えるほどの巧みな絵を描く。
・描いたものが実際に本物になってしまうほどの神秘的な力をもつ。

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