授業の予習復習・大学入試対策【古今和歌集】の本文・現代語訳・品詞分解・確認問題

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古典ノート
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古今和歌集の本文と現代語訳

ここでは教科書に載っているような有名作品を挙げておきます。最低限、これらの和歌を理解しておけば、授業や大学入試でも役立ちます。

もちろん高校の授業の予習・復習でも活用してください。和歌は自分で補いながら読むことが大事になります。慣れるまで何度も何度も音読して、意味と頭で考えていきましょう。

春立ちける日よめる                                                                                               紀貫之

袖ひちてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ(春歌上)

【現代語訳】

立春の日に詠んだ歌                                          紀貫之

(去年の夏)袖が濡れるような状態で手ですくった水が、(秋が過ぎ冬が来て)凍っているのを、立春の今日の風が、今頃溶かしているのだろうか。

題しらず                                                                                                      よみ人しらず

五月まつ花たちばなの香をかげば昔の人の袖の香ぞする(夏歌)

【現代語訳】

題しらず                                                            よみ人しらず

五月を待って咲く橘の花の香りをかぐと、昔親しんだ恋人の袖の香りがすることだ。

秋立つ日よめる                                                                                                  藤原敏行

秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる(秋歌上)

【現代語訳】

立秋の日に詠んだ歌                                          藤原敏行

秋がやってきたと、目にははっきりと見えないけれど、(吹く)風の音に(秋が来たのだなあと)はっと気づかされたことだ。


冬の歌とてよめる                                                                                                  源宗于

山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば(冬歌)

【現代語訳】

冬の歌ということで詠んだ歌                            源宗于

山里は(ただでさえ寂しいのに)とりわけ冬に寂しさがまさることよ。人の訪れもなくなり、草も枯れてしまうと思うと。

題しらず                                                                                                             小野小町

思ひつつ()ればや人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを(恋歌二)

【現代語訳】

題しらず                                                            小野小町

(あの人のことを)恋い慕いながら寝たので、あの人が(夢に)現れたのだろうか。夢と知っていたならば目を覚まさなかっただろうに。

弥生の一日より、忍びに人にものら言ひて後に、雨のそほ降りけるに、よみて遣はしける           在原業平

起きもせず寝もせで夜を明かしては春の物とてながめ暮らしつ(恋歌三)

【現代語訳】

三月一日頃から、人目を忍びこっそりと恋人に会って語らった後、春雨がしとしと降った日に、詠んで贈った歌 在原業平

(あなたのことを思って昨夜は)起きているでもなし、寝るでもなし、といった状態で夜を明かして、(今日は一日)春のものである長雨をぼんやりと物思いにふけって眺めながら一日を過ごしてしまったことだ。

重要単語

暮らすながむ遣はす山里おどろくさやかなりむすぶ語 句
動詞動詞動詞名詞動詞形容動詞動詞品詞
サ四マ下二サ四 カ四ナリバ四活用
①一日を過ごす。②歳月を送る。▼ここでは①の意。ぼんやりと物思いにふける。ぼんやりと見る。①(「遣る」の尊敬語)(人を)おやりになる。②(「与ふ」の尊敬語)(物を)お与えになる。③派遣する。④贈る。▼ここでは④の意。山中の村里。山荘。①はっと気づく。②目が覚める。起きる。▼ここでは①の意。①はっきりしている。②明るい。③澄んでいる。 ▼ここでは①の意。手で水をすくい上げる。意 味

品詞分解

品詞分解は、特に授業の予習・復習で活用していきましょう。品詞分解が分からないと和歌は意味を取ることができなくなってしまいます。

助動詞の意味や和歌の修辞などを知識として覚えて初めて作者の意図を読み取れるようになります。

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予想問題一覧

発問 「春立ちける日」とはいつか。

答 立春。

発問 「よめる」の「る」を文法的に説明せよ。

答 完了の助動詞「り」の連体形。

発問 「袖ひちてむすびし水」を現代語訳せよ。

答 袖が濡れるような状態で手ですくった水。

発問 「ひつ」の意味を答えよ。

答 水につかる、濡れる。

発問 「袖ひちて…」の歌に含まれている季節を挙げよ。

答 夏、冬、春。

発問 「袖ひちて…」の修辞を指摘せよ。

答 掛詞(掬び―結び、溶く―解く)。縁語(袖―結び・解く)。

発問 陰暦五月は現代の暦ではいつ頃にあたるか。

答 六月から七月頃。

発問 「香をかげば」の「ば」の働きを答えよ。

答 順接の確定条件(偶然条件)。

発問 「昔の人」とはどのような人か。

答 昔親しんだ恋人。

発問 「昔の人の袖の香ぞする」とはどういうことか。最も適当なものを、次から選べ。

ア 亡くなった両親の懐に抱かれていた幼い頃のことを思い出すということ。

イ 旧知の友人と装束の着こなしを競い合ったことが懐かしいということ。

ウ 尊敬する先人がすぐれた和歌を詠んだときの様子がしのばれるということ。

エ 昔の恋人と互いの衣を敷いて共寝をした記憶がよみがえるということ。

答 エ

発問 「立秋」は現代の暦ではいつ頃か。

答 八月上旬。

発問 「来ぬ」の読みを答えよ。

答 きぬ。

発問 「おどろく」の意味を答えよ。

答 はっと気づく。

発問 「おどろかれぬる」から助動詞を抜き出し、文法的に説明せよ。

答 「れ」…自発の助動詞「る」の連用形。「ぬる」…完了の助動詞「ぬ」の連体形(「ぞ」の係り結び)。

発問 「秋来ぬと…」の鑑賞文として最も適当なものを、次から選べ。

ア 秋の到来が遅れている原因は目に見えない風のせいだとしたところに新鮮味がある。

イ 秋の訪れを視覚ではなく聴覚によってとらえたところに知的な趣が感じられる。

ウ 「秋」には「飽き」が掛けられており、秋に恋人と別れた嘆きが巧みに詠まれている。

エ まだ暗い中、風の音でびっくりして起きたということから、秋の嵐を詠んだ歌だとわかる。

答 イ

発問 「山里は…」から係り結びを指摘せよ。

答 ぞ―ける。

発問 「思へば」の「ば」の働きを答えよ。

答 順接の確定条件(偶然条件)。

発問 「山里は…」について、

①何句切れの歌か答えよ。

②山里で冬に寂しさが募るのはなぜか。説明せよ。

答 ①三句切れ ②人の訪れもなくなり、草も枯れてしまうから。

発問 「思ふ」の意味を答えよ。

答 恋い慕う。

発問 「寝れば」を文法的に説明せよ。

答 ナ行下二段活用動詞「()」の已然形+接続助詞「ば」。

発問 「人」とは誰のことか。

答 恋人。

発問 「見えつらむ」について、助動詞「らむ」の意味を答えよ。

答 現在の原因推量。

発問 「夢と知りせば覚めざらましを」を現代語訳せよ。

答 夢と知っていたならば目を覚まさなかっただろうに。

発問 「思ひつつ…」について、

①助動詞「まし」の意味を答えよ。

②この和歌の主題として最も適当なものを、次から選べ。

ア 夢であっても恋人とずっと会っていたいという切ない思い。

イ 夢の中でさえも愛する人に会えないことに対するいらだち。

ウ 夢で会えたのだから、現実でもきっと会えるという希望。

エ 夢で相手を見るほど強く片思いしていることへの恥じらい。

答 ①反実仮想 ②ア

発問 「起きもせず寝もせで夜を明かし」たのはなぜか。

答 恋人のことを思って寝られなかったから。

発問 「ながむ」「暮らす」の意味を答えよ。

答 物思いにふける。一日を過ごす。

発問 下の句を掛詞に注意して現代語訳せよ。

答 春のものである長雨をぼんやりと物思いにふけって眺めながら一日を過ごしてしまったことだ。

補充 「起きもせず…」について、

①「人にものら言ひて」とはどういうことか。最も適当なものを、次から選べ。

ア 恋人に会って語らったということ。

イ 従者に外出する旨を伝えたということ。

ウ 宮中に仕える同僚と世間話をしたということ。

エ 帝に官位昇進のお願いをしたということ。

②この和歌には掛詞が用いられている。どの語に何と何が掛けられているか説明せよ。

答 ①ア ②「ながめ」に「長雨」と「眺め」が掛けられている。

応用・発展問題

それぞれの歌について、どのような感動・心情が歌われているか。考えてみよう。

10「袖ひちて」…立春を迎えた喜び。

11「五月まつ」…花橘の香りに触発された懐旧の思い。

12「秋来ぬと」…ふとした瞬間に秋の気配を感じた驚き。

13「山里は」…冬の山里の寂しさ。

14「思ひつつ」…人知れずひそかに恋人を恋い慕う、切ない恋心。

15「起きもせず」…逢えない恋人を思う、やるせない恋心。

「袖ひちて」の歌の理知的な点について説明してみよう。

答 暦や中国の文献『礼記』の記述を知識として踏まえ、昨夏袖を濡らしてすくった水が、冬の間は凍っていたが、立春の日の今日の風がその氷を溶かしていることだろうと頭の中で想像を巡らした歌である。目前にある状況に対する感動を率直に歌い上げる『万葉集』の歌と違って、知識によって感動を深めようという態度が感じられる。

ことばと表現について考えてみよう。

次の和歌の助動詞・助詞に注意して現代語訳してみよう。

袖ひちて むすびし水の こほれるを 春立つけふの 風やとくらむ

・し…過去の助動詞「き」の連体形。(直接に体験した過去の事柄を回想する。)

・る…存続の助動詞「り」の連体形。

・や…疑問の係助詞。(文末が連体形になる。)

・らむ…現在推量の助動詞「らむ」の連体形。

(去年の夏)袖が濡れるような状態ですくった水が、(秋が過ぎ冬が来て)凍っているのを、立春の今日の風が、今頃溶かしているのだろうか。

「山里は」・「起きもせず」の歌から掛詞を指摘してみよう。

・13…「かれ」が「離れ」と「枯れ」の掛詞。

・15…「ながめ」が「眺め」と「長雨」の掛詞。

和歌の修辞についてですね。和歌の修辞はこちらの記事で解説しているので、参考にしてください。

まとめ

いかがでしたか?

古今和歌集は、高校受験や大学入試で近年よく出題されます。複数文形式や挿入形式などによって「和歌だけではない形」の問題がよく見られます。

前後の文脈もそうですが、和歌自体も意味をしっかり取れないと、設問に答えることはできません。

授業で扱われそうな今回の古今和歌集で、きちんと対策を取っておくことが大事になります。

この記事が皆さんのお役に立てたら幸いです。ここまで読んでいただきありがとうございました。

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