近年、総合型選抜や学校推薦型選抜での入学者が急速に増えています。そんな中、必須になってくるのが「志望理由書」の提出ですね。さらに一般選抜でも「志望理由書の提出」を求めてくる大学が増えました。
「志望理由書の見本が知りたい」「志望理由書の書き方が分からない。」「何を書けば評価が高くなるのか分からない。」「高校の先生に直されたけど、ここからどうすればいいか分からない。」という人に向けて、理系の学部別志望理由書をまとめてみました。是非参考にして、自分オリジナルの志望理由書を完成させてください。
※各志望理由はあくまで参考例です。まだまだ具体化出来たり、良い表現に直したりすることができます。書き始めから終わりまでの流れを参考にする程度で、これだけでは完成になりませんので、ご注意ください。
数学(「教えることが好き」「解くことが好き」から抜け出そう)
私たちが安全にネット社会を生きていくには、情報セキュリティの基盤技術である暗号は欠かせない。 そしてさらに、情報技術の進歩にともない、暗号理論もより強固なものにしていかなければならない。 私は大学や大学院で代数学を専攻し、 暗号理論の研究をしていきたいと考えている。
私が暗号理論に興味を抱いたのは、 高校2年生の頃である。 もともとプログラミン グを趣味でやっており、 様々な国の人が開発した暗号に触れた経験がある。最初は暗号を解読することにだけおもしろさを覚えていたが、今ではどんな攻撃を受けても安全な暗号を生み出すシステムを考え出すことに興味がある。たとえば、計算量的安全性を根拠にした暗号の場合、ハードウェアの進化によって安全性が激減する恐れがある。安全性を保つために、少ない仮定のもと、より強固な暗号を生み出す仕組みを研究する必要性に迫られている。 一方、 RSA暗号は解法が存在しないことを安全性の根拠としているが、PNPが成立すると多項式時間で計算できることになり、安全性が揺らいでしまう。 もちろん、PNPなどの証明されていない問題を解き明かすことができれば、 数学界の発展自体に寄与するだろう。 そして、暗号によって我々の安全が保たれていることを考えれば、暗号理論の研究を進めることは私たちの生活にも非常に役立つ研究といえるのではないか。
そうした暗号理論の基礎となるのが代数学であり、私は代数学を応用した研究を進めている○○大学理学部数学科で学んでいきたいと考えている。 たとえば、暗号理論の理解に必要な群論や環体の理論を含めた代数学講座が充実していることや、代数多様体を研究し暗号理論に応用することを目的とする応用代数学研究室があることは、非常に魅力的である。 将来的には応用数学を専門とする大学院へ進学し、より安全な暗号理論を導いていきたい。そして、人々が情報化社会の恩恵を得られるよう、 数学の分野から支えられる人物に成長したいと考えている。
数学系を目指すときに書きがちな「解く面白さ」「解法がいくつもあってそれを見つける楽しさ」を述べていませんね。数学の特定分野(代数学)を応用し、暗号化へ繋げ、将来は情報社会のセキュリテーにまで繋げているので高評価を得られます。
物理学(物理学と社会との接点を考え、社会貢献へ繋げよう)
エネルギーの消費によって起こる環境問題は数知れない。 この問題を解決するために、省エネルギーに関する研究が様々な分野で行われている。 私は、省エネルギー研究と並行してエネルギーを伝達する時のロスをなくすという研究も行うべきだと考える。エネルギーの伝達ロスを減らすことができる可能性を秘めているもののひとつに、 超伝導の性質がある。 私は超伝導の性質をエネルギーロスの防止に役立てる方法を研究し、エネルギー消費の少ない製品の開発に活用したい。
私は、○○大学の物理学セミナーの受講をきっかけに、 超伝導の可能性を考えるようになった。超伝導体は電気抵抗が0になるので、その性質を送電線などに応用することによりエネルギー消費が抑えられる。しかしながら、現状ではこうした応用にまでは至っていない。 それは、超伝導現象は室温のように温度が高い場所では起こらないため、電子制御しようとしても、コンピューター発熱が影響を及ぼす恐れがあるからだ。私は室温でも使用できる高温超電導体を発見するか、または危険性が少ない冷却方法を研究していきたい。 この技術を、送電線やコンピューターなどの生活と密接に関わるものに応用できれば、 電気エネルギーをジュール熱によって失うことなく遠くまで運ぶことができる。 ひいてはエネルギー消費削減に繋がり、現在深刻化している地球環境の改善に貢献できるだろう。
こうした研究を進めるためには超伝導の基礎知識だけでなく、それを応用するための能力の習得が不可欠だ。 ○○大学理工学部物理学科では 物理学の理論を基礎から適切に理解できるカリキュラムが組まれているだけではなく、 超伝導・低温に特化した講義や研究室を有していることが魅力的である。 私は貴学での学びで、 超伝導とエネルギーとの関係について研究を行いたい。 将来はエンジニアとなって、 それらを 応用してエネルギー消費の少ない製品開発に携わりたい。
物理学の具体的な分野とそれの研究課題、そして社会へどう役立てていくかということがしっかりと書かれています。とくに物理学の場合は、それぞれ研究したい分野の深い知識・理解が求められます。
生物学・生命科学(「生物を学ぶのが面白い」で終わらせない)
人間を含め、様々な動物は本能によって行動を起こすことがある。私はどういう遺伝情報により本能が備わり、どういう神経回路を経てその行動が発現するのか、分子生物学の視点から研究していきたい。
私は、中学生の頃に知ったミツバチのダンスコミュニケーションをきっかけに、動物の本能行動に興味を持った。働きバチは円形ダンスで仲間に餌の場所を伝える。現在、その仕組みを分子レベルで解き明かす試みが進められている。この研究では、ミツバチの遺伝子とダンスとの関連性を探り、行動の原因となる遺伝子を特定しようとしている。 行動が本能的なものであれば、影響を与える遺伝子が存在するはずなので、謎を解き明かすための最も直接的な手段だと考える。 もちろん、動物の本能行動を探るには野生の状態を観察する生態学的な研究も欠かせない。 このように本能的な行動を遺伝子レベルで解明する仕組みが整えば、様々な動物の行動の根源を解き明かす ことに応用でき、生物学の発展に寄与できる。また、人間の無意識な行動の解明にも役立つに違いない。
そのような研究をするためには、 分子生物学の視点だけでなく、 遺伝学や動物行動学も専門的に学べ、 研究に活かす知識を修得する場が必要だ。 ○○大学理学部生物学科は、段階的に専門性を高められるカリキュラムが備わっており、私にとって特に魅力的だ。 入学後、 私は△△教授のもとで本能行動の研究をしたいと考えている。なぜなら、△△研究室ではショウジョウバエの行動を制御する遺伝子を解明し、本能行動と脳との関係を分子生物学の視点から研究しており、私が望む研究をすることができるからだ。
将来、○○大学で培った技術や知識を用いて様々な動物の本能行動を研究し、ひいては人間の行動を解き明かしたい。 そして、 生物学の発展を担う一員として、広く社会に役立ちたいと考えている。
自身の経験が生かされた志望理由書になっています。そこから生物学のどのような分野を研究したいのかへ繋がっています。将来の職まで繋げられたらより良いものになっていました。
地球科学(この分野が今どのような研究がされているか把握しておく)
2011年3月、東日本大震災が発生し、日本に甚大な被害をもたらした。 そして、日本は南海トラフ巨大地震など、常に地震のリスクを負う国でもある。 私は人々の地震に対する不安を取り除くため、その原因となる地殻歪を解析し、地震の予測に役立つ研究を進めていきたいと考えている。
私が地震の予知に興味を持ったのは、中学生の頃であった。大きな地震を経験し、 地震の威力を実感したことがきっかけである。現在、地震を予知するために、様々な研究機関で地殻歪の観測が行われている。 たとえば東日本大震災は太平洋プレートと北アメリカプレートの境界で起こったが、両者が押し合ってできた地殻歪が解消した際に生じたものである。 一方、その解消と同時にプレートへの力のかかり方が変わり、さらなる地殻歪を引き起こし、新たな地震を発生させる要因となっている。 こうした地殻歪の計測はGPSや三角測量によって行われているが、地殻歪の臨界量や地質構造による歪の違いは未だに解明されていない。地殻変動や地震波の記録の解析に加え、 海底を含めた地質調査を進めることができれば、過去に発生した地震の特徴を体系化したり、地震予測に役立てたりすることが可能である。また、災害の危険性が高い建造物の立地を検討する際にも役立つ、 非常に重要な研究だと捉えている。
このように、私が行いたい地殻に関する記録解析や、より詳しい地質調査による正確な地震予測に関する研究を進めるためには、地震予測研究を推進しているだけでなく、地震学教育が充実している大学で学ばなければならない。 ○○大学理学部地球科学科では、地質学や地殻構造学をはじめとした地球の変動を捉えるための基礎的な学びが得られるだけでなく、 地質調査や海洋調査の結果を地殻の解析に活用する試みを行う△△研究室があることが魅力的だ。
将来、私は研究者として、研究の成果を日本だけでなく海外の地震大国の支援にも役立たせたい。 そして、 私は地震の研究を通して、そうした国々で人々が安全に暮らすための支えとなりたいと考えている。
地球科学に関しては、まだまだ未開の部分が多く、「何が解明されており」「何が解明されていないのか」が大事になります。その上で、自分はどんな研究をしてどう社会に貢献したいのかを述べていきます。調べるなどして、深い知識が求められます。
電気・電子・通信工学(この分野に「興味がある」で終わらせない)
私たちは、様々な音響機器を用いて音楽を堪能している。 しかし、その音に違和感を覚えることもしばしばある。 私は音の成分を分析する研究を通して、デバイスを通して音を再現する技術を生み出し、音楽を愛する人々に貢献したいと考えている。
そう考えたのは、私のヴァイオリン演奏の経験による。 私は5歳の頃からヴァイオリンを習っているが、 共鳴胴のない電子ヴァイオリンの音には常に疑問を持っている。 ヘッドフォンで音を聴けるので、たしかに集合住宅で練習する時には便利だが、本物のヴァイオリンの音には到底及ばない。なぜこのような音の差が出るのかというと、 楽器の音は複数の周波数の音波によって成り立つだけでなく、音を聞く環境によって反響や残響が異なるからだ。 そうした複雑な要因が絡み合っている中で作られている音を再現するには、音の成分分析技術の向上が欠かせない。 必要な周波数の音のみを再生するには、元々の音の信号をより緻密に解析しなければならない。 この研究は音楽界のみならず、他分野に活用することもできる。たとえば、音の成分を分析して復元する技術を補聴器に活かせば、より聞き取りやすくすることもできるだろう。 私は音の解析技術の向上を通して、広く社会を支える人材になりたいと考えている。
こうした目標を実現するためには、 電磁気学や電気回路といった電気工学の基本だけでなく、 電気音響工学を活かした音の解析技術を生み出す力を身につけなくてはならない。そのために選んだのが、○○大学工学部電気電子情報工学科である。 貴学では、次世代音楽・音響プロジェクトという電気音響工学を体系的に究められるカリキュラムがある。 さらに、楽器の音色の成分分析を研究テーマとする△△教授の研究室があることも魅力的だ。 電気音響工学の知見を研究に活かすための環境が、貴学には備わっているのである。 入学後は、大学で思う存分研究を進め、様々なオーディオデバイスの開発に役立つ技術を生み出していきたい。
電気製品や通信技術に「興味がある」「好きだから」と書かれがちな分野ですが、自身の経験を活かして問題点(課題点)を明確にしていますね。それを自分なりに「こう解決したい」と述べ、社会貢献へと繋げることができています。
情報工学(PCやソフトウェアへの興味だけで終わらせない)
パソコンやスマートフォンが広く普及している現代において、 様々なソフトウェアが活用されている。 しかし、必ずしも使い勝手がよいわけではなく、ユーザーの意向を踏まえて修正をする必要がある。 私は、これらの修正を行うエンジニアを支援するソフトウェアを開発したい。
私はパソコンやスマートフォンを使うが、使い勝手に不満を覚えることがある。たとえば、ソフトウェアが強制終了することがあったり、クリックやタッチをしても反応しなかったり、 右クリックで操作できたら便利だと感じたりすることだ。 このようなユーザーの不満を解消したり、 機能性や操作性を向上させたりするために、 既存のソフトウェアの修正や保守作業が、エンジニアによってしばしば行われている。しかし、アップデートを行うには相当な時間が必要となる。 複数の人間がひとつのソフトウェアの開発に関わると、時間もかかり複雑になるのは当然だからだ。 よって、 修正を担当するエンジニアは開発当初の意図や状況を把握することが難しい。私はそうし たエンジニアのために、作業が簡単になるソフトウェアの開発を行いたい。エンジニアを支援し、さらなる技術の発展に貢献したい。 そして、 使い勝手のよいソフトウェアを多くのユーザーに提供し、よりよいユーザー環境を築いていきたい。
この目標を達成するためには、プログラミングの技術に加え、ソフトウェアの開発環境やアーキテクチャに関わる研究ができる場が必要だ。 ○○大学理工学部情報工学科では、コンピューターの基礎理論や構造の理解に加え、実装技法を得る講座が1年次から段階的に設置され、研究するための学力的な土台が築ける。 その上でソフトウェア工学の専門家である △△教授の研究室において、ソフトウェア開発を支援する環境を構築するための教えが受けられる。
私は将来、貴学で得られたソフトウェア工学の視点をもとに、エンジニアのためのエンジニアとして、高度情報化社会に大きく貢献していきたい。
独自の視点で目標を考えることができていて高評価です。エンジニアのためのエンジニアになりたいというのは、オリジナリティーがあり、その理由もしっかりと欠けているので合格できる内容です。PC好きは数多くいますが、好きだけでは志望理由にならないですね。
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