「子どもがなかなか学校へ行ってくれない。。。」
「一度学校へ行かなくなったら、高校進学は難しいんじゃないか。。。」
「通信制高校なんて正直恥ずかしい。。。」
このように考えてしまう親御さんや中学生は多いと思います。
しかし通信制高校はれっきとした高等学校として認可されており、きちんと卒業をすれば高等学校卒業の資格が得られます。
私は私立の全日制高等学校に勤務していた経験がありますが、これからの時代を考えると「通信制高校」の選択は広く一般的になると考えています!
それだけではなく、「全日制の高校に勤務していた」さとうが、あえて通信制高校を紹介するのには訳があります。
「学校自体に合わないミスマッチ生徒が年々増えている。」
「苦しい思いをして、大人のために高校へ通うだけの生徒がいる。」
高校ってそんな嫌な思いして通うところではありません。できるだけ苦しい思いをさせたくないです。
この現状を見ていたので、多くの中学生に通信制高校も選択肢の一つであるということを広めたいと思いました。
さまざまな事情で通信制高校を考えている方に、メリットやデメリットを理解してもらい
高校進学の選択肢の一つになればいいなと思っています。
通信制高校へ進学を迷っていたり、不安に思っている方へ
【結論】
全国にどんどん増えている、広域通信制高校がオススメ!
※この記事では、全日制高校に行けないかもしれないお子さんを持つ保護者の方へ向けた、多くの進路選択の可能性を紹介しています。しかし、あくまで最終判断はお子様と保護者の方です。この記事は決して「全日制高校がいい」、「定時制高校がいい」、「通信制高校がいい」というようなものを意図してはおりません。あくまで選択肢の一つとして「通信制高校」が考えられるということです。
通信制高校の実態
文部科学省の調べによると、令和元年5月1日現在で通信制課程の高等学校数は以下のようになっています。
【通信制高等学校の数】
国立 | 公立 | 私立 | 総数 | |
独立校 | 0 | 7 | 106 | 113 |
併置校 | 0 | 71 | 69 | 140 |
総計 | 0 | 78 | 175 | 253 |
(協力校) | 0 | 162 | 175 | 337 |
※協力校(サポート校)とは、自宅から入学している通信制高校までの距離があり、通うのが難しい生徒のための定時制の高校です。スクーリングなど通信制といえども校舎へ行くことがあります。しかし校舎が自宅から通える範囲ではないことが、通信制高校だとままあります。
そのようなときに、協力校へ行けば「単位習得」ができます。
※併置校とは、全日制や定時制が開講されている高校に、併設されて置かれている通信制の高校です。
【通信制高校の増加数】
近年、全日制・定時制課程を置く高等学校の校数は全体として減少傾向にあります。
しかし通信制課程を置く高等学校の校数は全体として増加傾向にあります。
年 | 全日制定時制 | 通信制公立 | 通信制私立 | 通信制合計 | 増加数 |
平成2年 | 5,506 | 67 | 17 | 84 | ※昭和45年から+2 |
平成27年 | 4,939 | 77 | 160 | 237 | +153 |
令和元年 | 4,887 | 78 | 175 | 253 | +16 |
少子化が加速する中で、学校の数が増えるというのは、実はとても異常なことです。
この20年で大幅に増加しています。それほどまでに通信制高校の需要が高まっているのです。
【実際に通っている生徒数(人数)】は?
種別 | 国立 | 公立 | 私立 | 総数 |
全日制高等学校 | 8,476 | 2,052,788 | 1,025,170 | 3,086,434 |
定時制高等学校 | 0 | 79,290 | 2,645 | 81,935 |
通信制高等学校 | 0 | 56,373 | 141,323 | 197,696 |
通信制高校に通う生徒は、全体の5.9%となっています。学校の数と通う生徒数が増えたと言ってもまだまだ少数だと感じるかもしれません。
ただ、周囲がどうこうではなく、「お子様がどうしたいか」「保護者の方がどう考えているか」がとても大事です。
学校の数が増えてきているということは、それだけ多様な学校があるということです。
しっかりとマッチする学校があるはずです。
【通信制高校の年齢別生徒数】
年齢 | 人数 | 年齢 | 人数 |
15歳 | 37,526 | 20〜24歳 | 16,139 |
16歳 | 49,096 | 25〜29歳 | 5,321 |
17歳 | 59,173 | 30〜39歳 | 4,429 |
18歳 | 16,022 | 40〜49歳 | 1,366 |
19歳 | 7,712 | 50〜59歳 | 511 |
60歳以上 | 401 |
過去と比較しても、全体として若年化しています。平成2年では、20歳以上で61,152人いました。令和元年度では、20歳以上が28,167人に減少しています。
つまり、発達段階で高等学校に行く年齢層がそのまま通信制高校を選んでいるということになります。
同世代がかなり多くいるということですね。
また減少したとはいえ、20歳以上の生徒さんもいます。全日制では体験することのできない「異年齢交流」が通信制では可能になります。
スクーリングや面談指導日などで交流ができます。
【在籍生徒の実態】
事由 | 狭域通信制 | 広域通信制 |
小・中学校及び前籍校における不登校経験がある生徒 | 48.9% | 66.7% |
外国とつながりがある(外国籍・日本語を母語としない)生徒 | 2.8% | 2.4% |
ひとり親家庭の生徒 | 26.9% | 18.7% |
非行経験(刑法犯罪など)を有する生徒 | 2.1% | 4.1% |
特別な支援を必要とする生徒 | 11.8% | 3.0% |
心療内科などに通院歴のある生徒 | 11.0% | 4.8% |
これを見ると、ほとんどが「不登校歴がある」と「経済的な理由」に分類できます。
もちろん全日制に比べると、さまざまな人が在籍しています。
通信制に通うことで、「同じような悩みを抱えている人」にぐんと出逢いやすくなります。
これは「仲間に出会える」ということですので、このデータをマイナスに捉えるのではなく
これから前向きに学んでいく方向で捉えられるといいですね。
そして最近徐々に増えているのは、「本当にやりたいことが学びながらできるから」通信制にするという選択です。
eスポーツや専門的な学びが高等学校でできるのも、通信制の方が多いです。
お子様や保護者の方がベストだと思う選択ができると一番です。
なぜ広域通信制高校がオススメなのか?
【結論】
- 圧倒的に数が多い
- 特例を生かした独自のカリキュラムがある
- 柔軟性があり、常に更新・進化していく
狭域通信制高校は、公立の通信制高校です。一つの都道府県に限って募集をしており、数に限りがあります。
しかし、広域通信制高校はいわゆる私立の通信制高校で、全国どこでも入学することができます。
選択肢の数が圧倒的に違いますので、広域通信制高校をオススメします。
そんな広域通信制高校には独自カリキュラムがあり、「高校卒業程度の学力を学べる」と同時に「子どもが学びたい個性的な学び」の両方が可能になっています。
簡単にいうと、全日制であれば年間で105回の数学の授業を受けるべきところを
通信制では面接指導(いわゆる授業)が3回で良くなります。そこに添削指導が9回加わります。
実際これだけでは高校卒業レベルの学力として足りないので、多くの通信制高校は授業の回数を多くしています。
しかし、定められている最低数を考えるとこれだけで良くなります。興味関心に特化したカリキュラム(授業)が全日制よりも多く設定できるのも分かりますね。
現在はさらに法改正が進められているところなので、「通信制高校の質の確保・向上」はより改善されます。
逆に、狭域通信制高校(公立)は全日制教育に準じるようにカリキュラム(授業)が組まれています。どちらがお子様に適しているか、比較しながら探すのも一つです。
そして広域通信制高校は常に進化し続けています。
全日制高校でも「探究」が叫ばれています。しかし現実問題「探究」の時間は思うように取れていません。
「自分で課題を発見し、調査研究し、まとめ、発表する」という理想を追い求めてはいますが、現実授業が多くあるのでできません。
しかし通信制高校であれば、時間や場所にとらわれず、柔軟なカリキュラムで動くので、子どもたちを強く縛るものがありません。
その分、必要な教育をどんどんアップデートして取り入れていくことができます。
(例)eスポーツ・プログラミング・アプリ開発・ゲーム開発・オンラインコミュニケーション・現役プロの講師の授業
以上の理由で広域通信制高校をオススメします。
広域通信制高校のメリット
以下に広域通信制高校のメリットをあげておきます。参考にしてください。
- 同世代が多い。
- 少数だけど20歳以上もいるので、異年齢の交流ができるのは広域通信制高校だけ。
- 独自カリキュラムで多種多様なコースの設定がある。
- 個別指導特化型が多い。
- 自由な時間ができる。
- 学びたいときに学びたいことがしっかりできる。
- 自己管理能力が少しずつ身につく。
- 時間や空間に縛られない学びができる。
- 将来の職業につながる学びができる。
広域通信制高校のデメリット
以下に広域通信制高校のデメリットをあげておきます。参考にしてください。
- モチベーションが無いと続かない。
- サボろうと思えばいくらでもサボれる。
- リアルなつながりを感じられない人もいる。
(イベントや行事があるので参加すれば大丈夫ですが) - コースが複数あるので、ある程度の目的・目標が必要。
- 学校ごとの学費に差がある。(全日制の私立高校も同様)
- ずさんなカリキュラム・授業の高校もある。
(丁寧に、卒業率・進路先・学費を見ましょう) - お住いの地域によっては、協力校などがなく通えないことも。
オススメの広域通信制高等学校
全国には多数の広域通信制高校があります。ここでは、個人的にお勧めする高校をいくつかご紹介します。(あくまでオススメであり、最終判断はご家庭にお任せします)
一ツ葉高等学校 | 2022年までに横浜・福岡・埼玉に新規開校。独自の豊富なコースが魅力。 |
N高等学校・S高等学校 | 大手KADOKAWAとドワンゴによるネットの高校。豊富な課外授業が魅力。 |
クラーク記念国際高等学校 | 進学・留学に強い。オンラインと通学のハイブリッドも誕生。自分で担任を選べる。 |
翔洋学園高等学校 | 多様な学習スタイル。多様な活動。保護者会があり保護者の方も教育に参加。 |
明聖高等学校 | 未来型バーチャルスクール。自分のアバターを作り高校生活を送ります。 |
鹿島学園高等学校 | 全日制高校が運営。卒業証書も同じ。キャンパス多数で通いやすい。多彩なコース。 |
京都美山高等学校 | ゼロ・ライトコースは卒業がしやすい。目的に応じたコースがしっかりある。 |
精華学園高等学校 | 声優・イラスト・美大・建設など多様なコースあり。ここにあった指導が魅力。 |
トライ式高等学院 | 全国98ヶ所のキャンパス。サブカルやPCコース・学習特化コースなど多種多様。 |
ルネサンス高等学校 | 登校は年4日。ネット学習が充実。一人に一人の担当者。学費負担が少ない。 |
通信制高校のQ&A
通信制を考える際、よくされる質問と答えをまとめてみました。参考にしてみてください。
通信制に通っている子どもはどれくらいいるの?
A .全高校生の17人に1人は通信制高校在籍です。
通信制は全日制の高等学校に行くことができなくなった子どもの受け皿だと考えている保護者や教員が多々います。
実際に全日制からの編入数は多くいます。不登校やどうしても全日制にフィットしなかった子どもが行く学校という意識があります。
しかし文部科学省の学校基本調査によれば、2019年度の全高校生の17人に1人は通信制高校で学んでいます。すでに通信制高校が高等学校の選択肢の一つとして考えられつつあるということです。
どうやって入学するの?
A .広域通信制高等学校の入試方法の多くは、書類選考のみとなっています。
入試問題はないところが多く、一部の学校で面接や作文が行われています。ただし、面接の質問内容は志望動機や入学後に何をしたいかなどです。
つまり広域通信制の入試は落とすための入試ではなく、高等学校で何をしたいかを知る=入学後の意欲を確認するためのものです。
◯一般的な流れは以下のようになります。
学校説明会・個別相談会参加 → 出願・書類審査(個別面接) → 合格発表 → 入学手続き
※出願する際は、中学生→調査書(卒業する中学校が作成)
編入生→成績・単位修得証明書 および 在籍期間証明書
(在籍していた高校が作成)
転入生→成績・単位修得証明書(在籍している高校が作成)
基本的には「入学案内」に細かく指示されているので、あまり難しく考えずとも大丈夫です。
ちゃんと卒業できるの?
A .94%の卒業率です。
広域通信制に行けば自分のペースで学習ができるので卒業しやすい、安心だと思っているお子様や保護者の方がいます。
しかし卒業率は全日制と比較すると、全日制が99%に対して通信制が94%と少し低くなっています。ただし、全日制に合わず通信制に編入したこの人数分は、全日制の卒業率の分母に入っていません。
それを考えれば通信制の卒業率は全日制と同等かそれ以上と言えます。つまりしっかりと卒業できるというわけです。
【卒業できない原因】
- 自分でレポートを進めたり、自分で学習したりするモチベーションが維持できない。
- 精神的な不安定を相談できない。
- 学力不足であっても個別質問ができない。
上記のサポートは、多くの広域通信制高校で行っています。
しかし、自分でそのサポートを活用しようとせず何もしないままでは卒業は難しくなります。
通信制高校は個別対応が基本ですので、積極的に活用することで簡単に卒業まで進級することができます。サポートを活用できずに卒業できないというパターンが多いです。
友達はできるの?
A .自分自身次第ですが、「作りやすい環境」ではあります。
インターネット上だけで友達ができるのか心配される保護者の方は多いと思います。
しかし、「学びリンク」さんの調査によると、友達が作れそうだと思っていた生徒の割合が19%から31%に近年で向上しています。
また固定された人間関係になりやすい全日制と比べると、容易に逃げやすく「みんなと同じ」を強制させられる機会がありません。
人間関係を構築しやすい環境だと言えます。
高等学校卒業資格は全日制と同じなの?
A.全日制、定時制、通信制に区別はありません。
高卒認定試験は、高等学校卒業程度の学力を保証する試験です。
高等学校卒業資格は現在の日本社会のシステム上、取っておかないと後々不利になることがあるので、
多くの広域通信制高校で取れるように設定されています。
通信コースと通学コースの違い
A.通信コースはネット上のやり取りのみで学ぶコースです。通学コースは、決まった日数を協力校に直接行き、そこで授業や面談を行いながら学んでいくコースです。
通信コースでも全く学校に行かなくていいわけではなく、スクーリングと呼ばれる登校日があります。協力校に行き、テストや面談などが数日あります。
通学コースは学校ごとに異なります。週に1日登校、全日制と同じように毎日登校、好きな時間に登校などがあります。
お子様やご自身で無理のないコースを選択できるのも広域通信制高校の良さです。そのため続けやすくなっています。途中で変更も可能の高校が多いです。
お金はどれくらいかかるの?
A.全日制高等学校と同じくらいです。(入学するコースによります。)
おおよそのイメージをお伝えします。
通信コース・・・公立全日制高校の3分の2
通学コース・・・私立全日制高校と同等
通信と通学のハイブリット型・・・公立全日制と私立全日制の間くらい
学費はとても大切です。ご家庭でしっかりとパンフレットなどで確認し、不明な点は実際に説明会などへ行き聞いてください。
不安を残して入学をしないことが重要です。
広域通信制高校への転入学と編入学の仕方・違い
A.転入学は転校のことで、編入学は今の高校を辞めてから新しい通信制高校に入ることです。
高等学校は全日制でも通信制でも転入学は難しくなっています。よほどの事情(一家転住や死別など)が無い限り転入学(転校)はできないと考えた方がいいです。
転入学は、基本的にいつでも転入学試験を受けられるので、合格すれば転入学できます。
しかし、たいていは編入学です。
編入は学校が指定した時期に編入試験を受けて編入することになります。
試験自体はどちらでも難しくはありません。書類審査と簡単な面接などがあるだけです。
さらにどちらの場合でも、現在通っている(いた)高校で取得した単位数を引き継ぐことができます。
簡単に言うと、今まで受けた授業の分は無駄にならないということですね。再度授業を受けなくてもいいということです。
ただし高校1年生は注意が必要です。高校1年生は1年生の3月31日をもって、各教科の単位習得となります。
つまりそれまでに辞めてしまうと、単位未修得扱いです。通信制高校に編入学しても単位0からのスタートになりますので、注意が必要です。
大学進学ってできるの?
A.できます。学校によっては難関国公立大学や難関私立大学にも合格しています。
大学進学が不安な保護者の方やお子様は多いと思います。授業も少なくて受験に対応できるのか心配ですよね。
実はこれ、本人次第です。全日制普通科の高校でも生徒次第なんです。超進学校でもついていけず、勉強をしなくなってしまう生徒はたくさんいます。
広域通信制高校のほとんどでは、大学進学コースがあります。学習や受験に特化しています。しかも全日制とは違い、塾のように個別指導をしてくれます。1対1での指導なので置いていかれることもありません。
もちろん他者と切磋琢磨する機会は少なくなりますが、同じコースに所属する人と競い合いことはできます。
まとめ
広域通信制高校は、お子様の可能性を広げてくれる学校の一つです。
もちろん他の高校という選択肢もあります。
進路の選択には多くの可能性があります。1つのこと・1つの固定的な考えに縛られることなく学校を見てみてください。
「公立じゃなきゃダメ・私立は高い・通信制はダメ」
すべて固定観念です。一度壊してから、お子様に一番フィットする学校選びを考えてみてください。
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