古文を学習する上で絶対に外せないのが「助動詞の意味」です。よく「英単語ほど覚える数は多くない」と言われますが、それでも苦手意識をもつ高校生・受験生は多くいます。
今回はそんな「助動詞の意味がよく分からない」・「何から覚えればいいのか知りたい」・「判断方法が分からない」という疑問を持った方に、受験問題で出題される助動詞の分かりやすい識別方法と絶対に覚えるべき意味だけを解説していきます。
とりあえず苦手なので、『これだけは覚えておけ』というものを教えてください。
実は文章によく出てくる助動詞って決まっているので、そこから覚えていくことが重要になります。頑張って覚えていきましょうね!
それでは、それぞれの解説をしていきたいと思います。基本的な意味や同じ形だった時の識別(意味の判断)方法など、入試やテストでも出題されやすい部分を中心にまとめています。
※目次から知りたい助動詞をクリック(タップ)できます。
1 過去・完了の助動詞
まずは文章中で1・2を争うほどよく使われている助動詞「過去・完了」の要点整理です。
★「けり」の文法的意味と見分け方
「けり」は、和歌や会話文の中で用いられたときは、[詠嘆]の意になることが多いです。
★完了の助動詞+過去の助動詞(けり・き)の形
➡︎完了の助動詞は、しばしば過去の助動詞とともに用いられる。
例 「てき」「てけり」「にき」「にけり」など
★「つ」「ぬ」「たり」「り」の文法的意味と見分け方
★「つ」「ぬ」の下に推量グループの助動詞が続いたときは、「つ」「ぬ」は[強意]の意になることが多い。
(訳は「キット~」「必ズ~」「確カニ~」)
例 黒き雲にはかに出で来ぬ。風吹きぬべし。
黒い雲が急に出て来た。きっと風が吹くだろう。
★「つ」「ぬ」には並列という意味もある。
(訳は「~タリ~タリ」)
★「たり」「り」は、完了の他に[存続]の意を持つ。
(訳は「~テイル」「~テアル」)
2 推量の助動詞
★「む」の文法的意味
助動詞「む」には、次の四つの意味があります。
①推量〔~ダロウ〕
②意思〔~ヨウ・~ツモリダ〕
③適当・勧誘〔~ノガヨイ・~シマセンカ〕
④仮定・婉曲〔~トシタラ・~ヨウナ〕
★「む」の文法的意味の見分け方
〇主語の人称によるおよその見分け方
一人称(私・自分)―→意志
二人称(あなた) ―→適当・勧誘
〇適当・勧誘の意は、「こそ~め」「てむ」「なむ」の形をとることが多い。
〇仮定・婉曲の意の場合、下に体言や助詞がつくことが多い。
★「むず」について
「む」と同じ働きをする助動詞に「むず」がある。この語は、「むとす」がつづまってできた助動詞であり、次のように活用する。
[ ○・○・むず・むず・むずれ・○ ]
★「べし」の文法的意味
「べし」は「む・むず」の強調版+多義語です。文脈に応じて意味の使い分けをすることが大切になります!
①推量〔~ダロウ・~ニチガイナイ〕
②意思〔~ヨウ・~ウ〕
③適当・勧誘〔~ノガヨイ〕
④当然・義務〔~ハズダ・~ナケレバナラナイ〕
⑤可能〔~デキル〕
⑥命令〔~セヨ〕
★「べし」の文法的意味の見分け方
〇主語の人称によるおよその見分け方
一人称(私・自分)―→意志
二人称(あなた) ―→適当・勧誘 命令
〇可能の意は、多くの場合、下に打消の語を伴う。
〇命令の意は、言い切りの形や「べからず」の形で用いられる。
※「つべし」「ぬべし」の訳し方
「つべし」「ぬべし」の形のとき、「つ」「ぬ」は強意の意になり、「キット~ダロウ」「今ニモ~ソウダ」と訳す。
3 断定の助動詞
断定の助動詞は、意味を聞かれるよりも「識別」させる問題の方が多いです。パターンも多いので、出題者は好んで問題にします。
★「なり」の識別(見分け方)
1連体形・体言+「なり」→断定の助動詞
2終止形(ラ変型は連体形)+「なり」→伝聞・推定の助動詞
※撥音便の下は伝聞・推定の助動詞。
例 男もすなる日記といふものを女もしてみむとてするなり。
(「なる」は[伝聞・推定]、「なり」は[断定])
3四段動詞「なる」、ナリ活用形容動詞の活用語尾の場合もある
4場所を表す言葉に付く「なり」は断定を表す
★「たり」の識別
1体言+「たり」→断定の助動詞
2連用形+「たり」→完了・存続の助動詞
3タリ活用形容動詞の活用語尾の場合もある
4 受身・尊敬・可能・自発の助動詞
★「る」「らる」の文法的意味の見分け方
「る」「らる」の文法的意味は文脈で見分けるのが基本ですが、次のような目安もあります。
○知覚・心情語+「る」「らる」―→自発の意
※知覚・心情語に該当するもの➡︎「思ふ」「思ひ出づ」「ながむ」「泣く」「嘆く」「しのぶ」など
○「る」「らる」が可能の意の場合、打消の語や反語表現を伴って用いられることが多い。
○「(人に)~れる・~られる」という文脈になっている場合、受身の意であることが多い。
○主語が貴人で、自発・可能・受身のいずれの意味でも文意が通らない場合は、尊敬の意。
○尊敬語動詞+「る」「らる」―→尊敬の意(二重尊敬・最高敬語)
※ただし、「思す」「思ほす」(心情)などの語についた場合は、自発の意であることが多い。
○「る」「らる」+「給ふ」―→自発か受身の意
5 尊敬・使役の助動詞
★「す」「さす」「しむ」の文法的意味と見分け方
1尊敬語(「給ふ」など)を伴わないとき・・・すべて使役の意
2尊敬語を伴うとき
ア 尊敬の意(二重尊敬・最高敬語)
イ 使役の意
※ほとんどの場合は尊敬で、使役はまれである。基本的には文脈で判断する。
※使役は、上に人物の対象を表す格助詞「に」「して」があることが多い。
例 随身に(扉を)たたかせ給ふ。
随身に(扉を)叩かせなさる。(二重尊敬ではなく使役)
★受身の「す」「さす」
軍記物語では、受身を「す」「さす」で表現する場合があります。訳は受身で訳せばOKです。
例 馬の額を篦深に射させて、
馬の額を深く射られて、
まとめ
以上が、受験問題で出される「超基本」的な助動詞です。再度まとめておきましょう。
苦手な人はこれらをしっかりと覚えることから始めてみましょう。それだけで本文の意味がとれるようになり、文法問題で応えられるようになります。
ぜひ頑張ってみてください!
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