皆さんこんにちは!
中堅塾長さとうと申します。
私は高校進学・大学進学に向けての進路指導に12年間、関わっています。今も現場の最前線で進路活動を行っています。そんな私が、今回は「国公立・私立大学に向けた志望理由書の書き方」をまとめてみました。
総合型選抜や学校推薦型選抜で国公立大学・私立大学を希望している受験生は、必須となる書類ですよね。国公立2次試験でも提出を義務付ける大学も増えました。
この記事を読んで、ぜひオリジナルの志望理由書を完成させてください!
志望理由書に正解はありません。ただし、書かなくてはいけないこと、読んでいただく大学側に伝えなければならないことは明確にあります。
正解がないとはいえ、正しい情報が過不足なく書かれていない志望理由書は「残念な志望理由書」となってしまいます。残念な志望理由書とならないように、ぜひ本記事を参考にまとめてみてください。
志望理由書の正体
毎年100人ほどの志望理由書を10年以上指導してきましたが、「志望理由書の正体」を全く分かっていない受験生がとても多いです。
それでは(その書いたやつでは)「小論文だよ。」「自己PR文だよ。」「ただの大学パンフ丸写しだよ。」などなど、志望理由書の添削で持ってきてくれたはずなのにそもそも志望理由になっていないパターンが実に多いです。
え?当たり前じゃん!と聞こえてきそうですが、この当たり前が皆さんできていないんですね。しかも相手に誤解無く伝えるためには「論理的」な書き方でないといけません。
いきなり論理的と言われると、何をすればいいかわからなくなってしまい人もいるかと思います。本記事の「構成」通り書けば、自然と論理的になっていますので安心してください。
さらに「熱意」です。自分がどれだけその大学に入りたいか、を繰り返し述べることで相手に「本当に入りたいんだなぁ」と思わせることができます。もちろんそれに適した「言葉選び」をしなければなりません。
「すべての結論が、その大学でなければならない理由になっているか」を常に考えながら書くことが重要です。
【例えば】
・将来の夢のために、「こんな力を身に付けたく」「それができるのが貴学です」のパターン。
・「こんなことを学びたく」、それが「貴学のこの授業・教授から学べる」ので「貴学じゃなきゃダメ」のパターン。
・「この社会問題を将来解決に導きたい」から「貴学のこの研究がそれに直結している」ためのパターン。
などなど。
「貴学でこれがやりたい・学びたい・研究したい」➡「それをこのように社会貢献したい」が理想的なパターンです。主体的な行動を意識し熱意を伝えていきましょう。
志望理由書を書くための大前提となる知識
ほとんどの受験生が
「なかなか書けないな、どうしよう・・・とりあえず・・っぽい事書いてみればいいか!」
といきなり書き始めてしまいます。
中には「書き方を調べてみよう。」「先生に聞いてみよう。」と行動できる人もいるでしょう。それは素晴らしいことです。
しかし、たいていは「志望理由書の構成」だけで終わってしまいます。構成を知ることを「大事な前提」と勘違いしてしまう人が多いです。構成とは「初めにこんなことを書いて」「次に本論でこんな事書いて」「最後にこんな感じで結論を再度言います」的なものですね。
・いきなり書く
・「書き方」=「構成」だと思ってしまう。
実は「構成」を知ることも大事なのですが、構成にいくためには「もっと大事な前提の知識・準備」があります。それは大きく分けると3つあります。
「自分自身の事」・「社会の事」「大学の事」
これらをしっかりと調査・分析しておかないと「残念な志望理由書」へとなってしまいます。では、具体的にどんなことを調査・分析すればいいのか。以下にまとめておきましたので参考にしてください。
調査・分析項目 | 注意点など |
将来の夢 | 具体的に仕事に就いて、どんなことがしたいのかを具体化しておくことです。 |
夢のきっかけ | 将来仕事にしたいと思ったきっかけ・エピソードです。これが自分にしか書けない部分となります。 |
夢に関わる社会の事 | 将来就きたい仕事に関係する「社会問題」「社会の出来事」を調査・分析します。さらに自分がどのようにその問題・課題へ取り組むのか。現在と未来(仕事に就いてから)の2視点で考えます。 |
仕事・職に就くために | どんなルートで仕事に就けるのか・どんな資格が必要なのか・どんな学び(知識・技能)が必要か、を調査・分析してまとめます。 ここが「自分が大学で学びたい事・やりたい事」に繋がります。 |
大学研究 | 大学のAP(アドミッションポリシー)・DP(ディプロマポリシー)・CP(カリキュラムポリシー)を理解する。求める人物像・卒業時に求める力・授業方針です。HPやパンフレット・オープンキャンパスや説明会に参加して情報を集めます。 |
自分が必要(将来の夢のための学び・研究・技術・資格)とする、授業・ゼミ・大学の特徴的なオリジナルの取り組み・教授などがあるか・いるかを調査します。また受けたい授業や支持したい教授、やってみたい取り組みなど具体的にその大学でしかできないことをまとめます。 学びたいこと・研究したいことですね。 | |
大学の施設や校風(雰囲気)、学生の様子などオープンキャンパスなどで見聞きしたことをまとめておきます。(つまりオーキャン参加は必須です。) | |
※国公立大学志望であれば、支持したい・学んでみたい教授の「論文」を読んでおきます。自分とどこが合っていて(マッチしていて)、どんなことができるのかが分かります。 | |
自己分析 | 自分には何ができて・何をしたくて・どうなりたいのか。将来のビジョンを考えていきます。 |
最低でも上記の項目を「ノートにまとめる」などしておきます。これらの材料が無いと次の段階(構成)にいくことができません。
もし一人で考えるのが厳しいのであれば、「本」・「インターネット」・「SNS」で情報収集するのと同時に「保護者」・「先生」・「友人」に協力してもらい掘り下げていきましょう。
志望理由書の構成と注意点
事前の準備が完了したら、いよいよ構成に入ります。私のお勧めする志望理由書は「4部構成」となります。第1部から第4部まででそれぞれ「テーマ」があり、それに沿ってまとめていきます。
※簡単に言うと「4段落」構成になります。
第1部 将来の夢・職業と将来どのように社会貢献していくか。
ここは小論文のスタートの部分です。まずは自分がどんな力を持った、どんなことができる人物として、どのような仕事に就きたいのかを述べます。
そして、その職業人として、どのように社会貢献していくかまで書いていきます。つまり、最終目標(結論)を述べていきます。
第2部 その夢のきっかけを、就きたい職業に関する社会問題と絡めて述べる。
ここでは、その仕事を目指すきっかけ・理由を説明します。自分の経験・体験からしか出てこない部分です。他の受験生と差をつけるためにもここは頑張って深堀します。ただ、エピソードを長くしても自己PRになってしまうので、端的にまとめていきます。
さらに、その仕事にまつわる社会問題・世の中の課題を述べます。高校3年生として・これから大学生となる人間としてふさわしい自覚を持っていることへのアピールにもなります。
この時重要なのは「客観的なデータ」に基づいた社会問題・課題でないと相手は納得しないということです。
「日本には多くの外国人観光客が来ているが~」ではなく「日本政府観光局の訪日客数によると令和3年度は25万人の外国人観光客が来ているが~」の方が説得しやすくなります。
そして、その課題へのアプローチを述べていきます。どのような解決策が考えられているのか・行われているのか・今後必要になるのかを自分事として書いていきましょう。
そして、できれば両者(目指すきっかけと社会問題)をバラバラに書くのではなく、一つの流れとしてまとめられると完璧です。
第3部 身に付けるべき能力と大学でやりたい事(ここが一番大事)。
自分のなりたいものになるため、社会問題に対応していくためには、「どんな能力」が自分には必要なのかを述べます。夢だけ語って終わりにしてはいけませんね。しっかりと分析して、「やるべきことが分かっています」とアピールします。
そして、そのやるべきことが「貴学ならできるのです・貴学でしかできないのです」と伝えます。ポイントは大学側の「何を・どのように」活用して「どんなことをやりたいのか・身に付けたいのか」を具体的に書いていきます。
「大学の授業」・「ゼミ」・「教授」・「研究室」・「特徴的な取り組み」・「課外活動」・「施設」などを活用して、「主体的に」「自分が何をしたいのか」をアピールします。それが「貴学に入りたい理由」になります。
※【貴学でやりたいこと=貴学でしかできないこと=貴学に入りたい理由】となります。
その後、字数に余裕があるのであれば、オープンキャンパスや説明会で見聞きした魅力的な点を挙げます。それらを「どのように大学生活に活かしていきたいか」の視点でアピールします。
※ここも褒めるだけにならないように注意です。
第4部 これまでのすべてをまとめる部分。再度、繰り返し熱意を伝える部分。
再度、以下の点をまとめていきます。
〇将来の夢・目標
〇そのために自分が学んでいきたいこと・研究していきたいこと・やりたいこと
〇そのためには、貴学が絶対に必要であること
〇貴学の「ここをこのように活かして」主体的に勉学に励んでいくこと
〇社会貢献(社会の課題へのアプローチ)も頭にあること
基本的には、第1~3部の繰り返しになります。ただし、全く同じ言葉で同じように繰り返すのではなく「言葉を変えて」「表現を端的にして」繰り返しましょう。
自分の持てる語彙力と表現力を最大限に使って、熱意のある志望理由書を完成まで書き続けます。1回で完成することはあり得ません。逆に1回で終わりにした志望理由書では、まず受かりません。
大変でも、何度も何度も添削してもらい、書き直していき、自分オリジナルの志望理由書にしていきましょう。
おすすめの書き出しと締め方
ここではテンプレート的な「書き出しと締め方」をまとめています。もちろん大前提の準備をしていないと書けません。準備をした後、まずはこれを参考にして書いてみましょう。最終的には自分オリジナルの書き出しと締め方になるように何度も書き直しをして完成させていきましょう。
志望理由書の書き出し
「私は将来、○○のできる△△になりたい。(の職・仕事に就きたい。)△△には、今の日本には~という意味で重要な役割を担っている。
△△を志すきっかけは、私が~。現在、社会では□□の問題が起こっている。(課題がある。)~のデータによると(客観的事実から問題を掘り下げていく)これ(ら)を少しでも解決へと導くためには、私の志す△△で~をしていかなければならない。他にも~。
このようにするためには、私自身が××を学び、●●を身に付ける必要がある。(自分が学ぶべきこと・身に付けたいことを述べる)」
このような書き出しで、「自分の目標➔そのきっかけ➔社会の出来事➔そのために自分が何をするのか」とどんどん深めていきます。
この後には、「じゃあ、大学で何をしたいのか=その大学でなければならない理由の核」を述べていきます。
志望理由書の締め方
当然として、締め方としては今までのまとめ・結論を述べます。「本当に貴学へ入りたいのです。」という熱意を再度アピールします。同じ意味のことを違う言葉で繰り返すので、語彙力を生かして書いてみましょう。
「将来は△△として○○を実践し、□□の解決のために尽力したい。そのためには貴学の~や~を活用し、××を学び●●を身に付けていく必要がある。以上のように私自身の能力をさらに高め、目標を叶えるには貴学が最も必要なので志望する。」
「△△・○○・□□・××・●●・~~」は、繰り返しになるので、できるだけ表現を1回目と変えてあげましょう。夢・目標の△△は同じでもいいかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?
合格するための志望理由書には手間暇がかかっています。あっさりしていたのでは、なかなか受かりません。しっかりと練って、考えて、ひねり出して、ようやくオリジナルなものが完成します。
基本的には「熱意があり、自分はこうしていきたいんだ」「その大学でなければならないんだ」という内容が好まれます。「明確な目的意識」ですね。そのような人に大学側も入学してほしいのです。
何をやりたいのかも分からない人では、卒業時の「就職率・就職企業のランク」を上げることなんて出来ません。大学側にとって「入学させる価値がある」=「大学に貢献してくれる・大学の価値を上げてくれる」=「一流企業に就職・一流の社会貢献をする」人間を取った方が利益になります。
ここをしっかりと理解して、「どんな人物を大学は求めているのか」ということを今一度確認しておきましょう。
この記事を読んだ人が、少しでも良い志望理由書を完成させられるようになっていることを祈っています。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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