意外と教員はプレゼンテーションの機会が少ないですよね。もちろん日々の授業を実践しているので、人に向けて何かを話すというのはしています。
しかし、あくまで授業は「自分で長年学んできた知識」が根底にあります。頭が真っ白になることも無いと思います。
プレゼンテーションは、短い期間で準備をし、目的がある相手に対して満足のいく情報を提供し、「最終的に相手を行動させる」ことが求められます。
例えば、学年集会や進路集会を行う時です。「ただ単に自分が言いたいことを言っているだけ」になっていませんか?
もちろん「説諭」は大切です。人として大切なことを教えたり、人生について考えさせることは重要です。しかし、それで終わっていませんか?
教員には出番の少ないプレゼンテーションスキルですが、大学入試には必須の能力となります。ご自身には必要なくても、生徒に必要となる場面は増えると予想できます。(授業などに導入する中学・高校が増えていますね。)
今後指導していく中で、本記事が少しでも役に立つことを祈っています。
さらに、実は
良いプレゼンができること=仕事やその評価、人付き合いや人生まで変えてくれる
効果があります。プレゼンを学んで上手く話ができるようになると、本当に様々なことが変わります。
ぜひそれらを体験していただきたいと思います。
プレゼンテーションの役割
プレゼンテーションの目的とは何でしょうか?
プレゼンテーションを「話を伝える場」と思っている人が多くいます。しかし、本来のプレゼンをする意味は、「相手に何らかの行動を促す」ことにあります。
これは想像以上に難しいことです。もともと行動するつもりがない人を、集中して聞かせるだけではなく、動かすところまでもっていかなくてはなりません。
「相手に行動を促す」ためには以下のポイントを押さえておきましょう!
・伝える情報は正しいもの、かつ説得力のある数字を使う。
・聞き手が何を求めているのか(聞きたいのか)をしっかりと分析する。
・聞いた上で、行動することのメリット・デメリットをしっかりと伝える。
(メリットが多ければ多いほど、動く原動力になります。)
・行動した聞き手が、さらに他の誰かにいい影響を与えられることまで伝える。
(それが可能になるようなプレゼン内容にする。)
良いプレゼンテーションというのは、聞き手を飽きさせない工夫をし、理解・納得のできる内容で、相手のモチベーションを上げ、行動させることができます。
そのためには、以下のような徹底した準備が必要になります。
教員のプレゼンテーションスキル【準備編】
具体的には以下のような感じです。
プレゼン対象者の情報を出来る限り調べる。誰がどんな目的で聞きに来るのか?
これは一般的なプレゼンと同じになってくると思います。
自校の生徒であれば、日頃の教育活動の中で分かると思います。自校の保護者の方が相手の時は、「何を求めに聞きに来るのか」を最優先で準備することが大事です。
「中学3年生保護者対象の進路説明会」と「新中学1年生保護者対象の新たな中学生活の話をしている中の進路のパート」では、保護者も求めているものが異なります。
前者であれば、細かな高校の選択方法や比較の仕方、偏差値や倍率の変化、公立の対策、学費など「お子さんと話し合える材料」を求めに来ると予想できます。
※(もちろん何も意識しないで来られる保護者の方もいると思いますが)
後者であれば、新たな中学生活を始めていく中で「高校進学」は当然化しつつあるので、「高校決定までの」大きな流れったり、公立・私立の区別(差)だったりを求めていると考えられます。
もちろん事前に聞きたい事のアンケートを取ることも有効です。
教員は自分の伝えたいことをメインに伝えてしまう(授業がそうだから)ので、聞きに来る相手ファーストでプレゼンは考えると成功します。
次に、
プレゼンを聞いた結果、どんな行動を起こさせたいのか?
プレゼンの目的ですね。
例えば先ほどの「中学3年生保護者対象の進路説明会」であれば、「7月の3者面談時までに、親子で進路の話し合いを行い、受験する公立・私立を決めてくる。」とかですね。
じゃあ、「その目的を達成するために=相手を納得させて動こうと思わせるため」に何が必要かを考えます。
具体的には、【納得できるだけのデータ・情報・行動した後のメリット】を伝えることですね。いかに相手が利益を得られるのか、を一番に内容を決めていきます。
他の例では、
「生徒指導に関する話を学年全体にする」などもありそうですよね。
その際にも、目的をはっきりさせます。
「ゴール = スマホを授業中に使わないように行動させる。」
準備段階としては、どんなプレゼンにするのか(方向性はあらかじめ決められていたとしても)は、「相手を第一にして考えていく」がベースになります。
それを忘れてしまうと、つまらない・独りよがりのプレゼンになってしまいます。
教員のプレゼンテーションスキル【スライド・資料編】
スライドや資料作りに時間をかけていませんか?
よくありがちな間違いとしては、プレゼン慣れしていないので【文字ばかりのスライド・資料】にしてしまうことです。
スライド・資料をプレゼンターが読んでいるだけになってしまうので意味がありません。それなら印刷して紙を配布して、「読んでおいてください。」の一言の方が時間を無駄にしないですみます。
なぜわざわざ人前に出て話をするのか?
それは読ませるだけ以上の効果を発揮できるからです。やはり相手の心に何かを強く訴えることができるのは、面と向かったコミュニケーションだけです。
相手を動かす・納得させる、心に訴えるプレゼンをするために「視覚的な補助」の役割をするのがスライド・資料だと言えます。
具体的にどんなスライド・資料が良いのか?
これが実は一番難しいのです。
というのも、プレゼンする内容によって変わってくるからです。
例えば、「写真だけのスライド」や「一言・キーワードだけのスライド」、「相手にメモを取らせるための資料」など自分の伝えたいこと・やらせたいことによってさまざまな手法があります。
さらにそれらを組み合わせてスライド作ったりもします。(おそらく一番多いです。)
簡単な一例になりますが、
例えば、生徒向けの進路講話(志望校を決めるために)を想定した時のスライドの初めです。
上記のような写真だけで、あとは話します。
以下のような順番でスライドの時に言葉を付け加えるイメージですね。話す内容をそのままスライドに書くのではなく、話の補助としてのスライドをイメージします。
①「今、志望校を決めろと言われても、何をどうすればいいか分からない人が多くいますよね?」
(スライドを出す。生徒たちには「確かに分からないこと・???が多いぞ」と意識させる。)
②「自分のやりたいことや将来の事なんかも考えて高校(大学)を決めないといけないのは分かっていても、どうすればいいんだろうと悩んでいませんか?」
③「今回の講話を聞いて、進路を決めるための2つの重要事項。将来やりたいこと・就きたい職業をイメージすることと、大まかでもいいの学校同士を様々な視点で比較することをしてみましょう。」
写真の上にアニメーションで「結論」(行動させたいこと)などを持ってきます。
プレゼンの最初には「結論」を持ってきます。伝えたいことは最初ですね。
言葉も短く、印象に残るようなキーワードでまとめられるといいですね。
このような感じで、余計なスライド・資料は作らずに「話す内容の補助」をイメージしていきます。自分の話・プレゼンを客観的に見て、聞き手視点であれば「どんなスライドがあればよりイメージしやすくなるか」を考えていきます。
ここでも「常に相手の視点に立って、相手のことを考えて」が大切になります。
もちろん、最後までスライドを作ってみて、再度プレゼンの内容とスライド・資料を見比べて減らす・増やす作業をしていきます。
最終的には、複数回の事前練習で適切なスライド・資料の内容になっているかを確認します。
教員のプレゼンテーションスキル【実践編】
スライドが完成したら、本番までできる限りの練習をします。
プレゼンに限らず、スポーツでも演劇でもお笑いでも勉強でも、何でも練習はつきものですね。プレゼンもできるだけ多くの練習機会を設けましょう。
練習で6〜7割決まります。当然ですが【スライドを見ながら話さない】ようになるまで練習します。ただしプレゼンは、練習のしすぎにも注意しなければならないのです。
以下のような「練習しすぎのワナ」があります。
とくに大切なことは、【聞き手の反応によって話を変化させていく】ことです。そのために【事前練習やスライド・資料】は完璧なものでなくていい、ということですね。
話す際の注意点
【ヒゲ言葉】に注意
「え〜、あ〜」のような【無駄な言葉・余計な言葉】という意味です。
実は教員に限らず人前で話をする際に、無意識にこれらの言葉を使っている人がとても多いのです。
話し方セミナーなどで、無理に「ヒゲ言葉」をとろうとはしなくてもいいと伝えている方もいますが、それはプレゼン上級者に限ると思います。
上手な人は、ヒゲ言葉があっても「間」や「話し方」のテクニックで気にならなくなりますが、あまり上手じゃない人が「え〜、あ〜」を連発してしまうと【耳触り】以外何もありません。
聞き手への視線
対面であれば、聞き手へ目線を向けます。(オンラインでもカメラを見ることで視線を送れます。)当たり前ですが、話す相手を見ましょう。
ただ、あまり意識しすぎるとこちらが「緊張」してしまいますので、目を見るよりは「おでこから頭頂部あたり」を見るといいです。
「相手を見る」ということは、聞き手からすると「私に話をしてくれている」と実感できることになります。プレゼンのゴールは「納得・理解させて、相手を動かす」ことです。
「自分に話してくれている」という実感は、納得・理解を促してくれます。
動き・ジェスチャー
立ち位置を変えます。同じ場所に突っ立っていると、聞き手は動きがないので飽きてしまいます。ジャスチャーも同じです。
人は動くものに意識を向けてしまいます。話している内容を補助する意味でも、内容に合ったジェスチャーをすることが大切です。
これも「プレゼンの様子を動画に撮っておく」ことで、どこでどんな動きが効果的かを振り返ることができます。ぜひ、ご自身のプレゼンを録画してみてください!
おわりに
いかがでしたでしょうか?
教員は授業を日々行なっているので、プレゼンテーションが上手だと思われています。(自分でも思っている方がいます。)
もちろん上手な人もたくさんいます。しかし、プレゼンの基礎や教員だからこそ意識しないといけないことを押さえておくことも大事です。
教員=話のプロ
もちろんプレゼンテーションも上手だと思われています。逆に下手だと「授業まで下手なんじゃないのか?」と思われます。
良いプレゼンができることは、仕事やその評価、人付き合いや人生まで変えてくれます。ぜひお話がうまい教員を共に目指していきましょう。
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